ウッディ・ヴァスルカは,1960年代より映像制作を始め,1970年代には初期のコンピュータ・グラフィックスに取り組むなど,メディア・アート界を代表するアーティストの一人である.近年は,アメリカの軍事研究所から廃棄された素材を用いた《ブラザーフッド》と題するメディア・インスタレーション・シリーズを展開しており,暴力とテクノロジーとの関係を追求する優れた作品として国際的に高い評価を受けている.ICCでは,1998年にその《ブラザーフッド》シリーズによる,彼にとって初の大規模なインスタレーションによる個展を計画しており,展覧会に先駆けて,彼のメディア・インスタレーション論のレクチャーを開催した.レクチャーにおいて彼は,近代テクノロジーが本質的に暴力的な存在であることを,不可避なものと認識しながら,そうした本質をあくまでニュートラルに表現するための装置としてのインスタレーションの存在意義を強調した.
『ICCコンセプト・ブック』(NTT出版,1997)より引用