ドイツのカールスルーエ・アート・アンド・メディア・テクノロジー・センター(ZKM)のビデオテック部門のディレクターを務めた(1991–94年)ディーター・ダニエルス氏の講演会.美術史上に登場した新しいメディアは,つねに芸術の新しい定義や新しい文脈の確認を求めてきたが,芸術は技術の発展の後追いをしていただけではない.今日のメディア社会では日常のことになっている立場や考えが,20世紀の傑出したアーティストたちの作品に先取りされていたのをみることができる.メディア・アートは,新しい美的な冒険を求めるアーティストたちがエレクトロニクスを使用したというだけのものではなく,疾走する技術の発展について再考する,まれな場のひとつとなりうる.マルセル・デュシャンからナムジュン・パイク,ヨーゼフ・ボイス,そしてフルクサスにいたる20世紀の芸術における主要な出来事を,電子メディアの発展との関連において位置づけ,特に今日のCD-ROMとインターネットによるプロジェクトの発展を,芸術的構想の歴史を背景として検討した.
『ICCコンセプト・ブック』(NTT出版,1997)より引用