本展覧会のための新作《リカーシヴ・リフレクション》は,音楽によって身体を動かす鑑賞者のモーションをKinectを用いてリアルタイムでサンプリングし,ELEVENPLAYによるダンスデータを学習したモデルをサンプリングしたデータによりチューニングし,ジェネレートしたモーション=ダンスを視覚的表現として提示します.
西洋美術の絵画・彫刻では,人間の身体をどのように描き出すかという,イコノロジーとしての身体像が重要要素であり,身体像の中にカノン(数的比率)やデフォルメを見出すことで美が追求されてきた歴史があります.また,写真や映画などのメディア・テクノロジーの発展は,事物の連続的な動きを視覚的に解析可能にしました.現実に対して再現性の高いこのような技術は,人間に新たな客観性を生み,身振りなど動きへの理解を深め,あらゆる表現に影響を与えてきました.
さらにサイバネティクスとデータ・ヴィジュアライゼーションが進化し,モーション・キャプチャー技術を始めとした,リアルタイムのセンシング技術,解析技術の急速な進化と身体表現が発展的に融合することによって,本作のように3次元的な身体の空間ヴォリュームの正確な把捉と,そのモーションの変化の精緻なデータ化,そして機械学習技術との併用によって,現在でありながら,過去を参照すると同時に,未来を瞬時に予測するような身体表現を実現しています.日々向上しているラーニング速度からも,メディア・テクノロジーのより大きな広がりを予感させます.
*展覧会会期中に,アルゴリズムやアウトプットの方法がアップデートされていく予定です.
ディレクション,開発:浅井裕太
ヴィジュアル・プログラミング:堀井哲史,計良風太
サウンド・デザイン:黒瀧節也
システム・プログラミング:石井2bit,花井裕也
クラフト:毛利恭平
プロデュース:井上貴生
ダンス・トレーニング・データ:ELEVENPLAY
監修:真鍋大度
特別協力:カイル・マクドナルド