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《切り立った映画》 [2011] “Perpendicular Cinema”

ジュリアン・メール

《切り立った映画》

作品解説

《切り立った映画》と《フリップ・ドット・ミラー(スモール・ヴァージョン)》の2作品は,スライド・プロジェクターとコンピュータで制御されたオリジナルの装置を用いた映像インスタレーションです.スライド・プロジェクターから投影される映像は,オリジナルの装置に取り付けられたミラー部分へ向けられており,反射した映像がスクリーンに映し出されています.このミラーの形状とパーツの数,そしてその動きが,映像に独特の効果を与えているのが見てとれます.彼の作品は,映像の物質性と,映像を映し出す装置がもつ物質性,その両方を露わにしていると言えるでしょう.

一方,《オクテット・プロジェクター》は,たくさんの小さな自作の液晶プロジェクターで構成された作品で,「ローレゾリューション・シネマ(低解像度の映画)」のシリーズにあたる作品です.オクテット(Octet)とは,音楽の分野では八重奏を意味しますが,情報通信やコンピュータの分野では8ビット(bit)を指す用語です.低い解像度や少ないデータ容量から作り出される映像に,意外にも深い奥行きや広がりが感じられるのは,写真家がネガに細心の注意を払うように,作家は自作プロジェクターの液晶に細心の注意を払っているからです.

メカニカルな映像装置を分解し,それを新たに組み直していくジュリアン・メールの活動は,メディア考古学の研究と芸術的実践との混成物であり,それはまさに「メディアの再発明」であると言えるでしょう.

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