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《Non-Retina Kinematograph(非網膜映写機)》 [2017–] “Non-Retina Kinematograph”

齋藤帆奈

《Non-Retina Kinematograph(非網膜映写機)》

作品解説

映画を超スロー再生しているディスプレイの真上で,真正粘菌の一種が培養されています.粘菌は暗いところを好むため,ディスプレイに映る映画のフレーム画像中の暗い領域の方に向かって動きます.その粘菌の形状に合わせて映画フレームのピクセルが入れ替えられ,粘菌の通ったあとの映画フレーム画像は,粘菌が好む色の領域と好まない色の領域に分けられていきます.プロジェクターで投影されるのは,粘菌と粘菌が変化させたフレームの変遷をタイムラプス映像として表わしたものです.

粘菌は,胞子を作成・放出する時期(子実体)と餌を求めて自ら動き回る時期(変形体)を環境に応じて行き来する,いわば植物的な面と動物的な面を併せ持つ生物です.ただし変形体が動く速度は時速1cm程度なので,人間の肉眼では粘菌が「動いている」と実感することは困難です.本作品においては,投影されたタイムラプス映像を見てはじめて,鑑賞者は粘菌と映画が動いていると知覚することになります.

齋藤は,粘菌を本作品における鑑賞者でもあり制作者でもあると捉えています.人間が網膜を通して光を感知することを「視る」こととするならば,全身で光を感じとる粘菌もまた,世界を「視て」います.粘菌は,餌を効率的に探索,摂取したり,環境変化のパターンを学習したりすることから,ある種の原始的な「知性」を備えていると言われます.投影された画像の連なりは,網膜を持たない(Non-Retina)粘菌が「観た」,そして「作った」映画であり,また本作品の構造の総体は,網膜を介さずに映画を製作し,投影する映写機となっているのです.

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