大小さまざまな6台のディスプレイに,ブレンダー,ヘアドライヤ,電子レンジなどの家電製品,自動車のワイパーなどと組み合わせて改造されたエレキギターなどが映っています.《ライヴズ・イン・ジャパン》は,電気のオン/オフに合わせて駆動音とともに動き出す装置を個別に映像として記録し,それらを同期再生することによって,複数の装置が機械的なリズムとともに躍動的にパフォーマンスを繰り広げるかのように再構成した作品です.《電波街(Radiowave Quarter)》では,同様の手法で,短波ラジオ受信機がさまざまな国の放送を受信する様子を記録した映像を複数同期再生し,複数の言語によるコンポジションを試みています.
「プライウッド・シティ・ストーリーズ」は,作家本人による「日本人英語」の一人語りで進行する,ドキュメンタリー的手法を用いた映像作品シリーズです.《ライヴズ・イン・ジャパン》に登場する家電や,日本の住空間について,作家の家族の来歴や作家本人の原風景とともに語られます.
作家は,これまで実際の装置の数々を空間に配置することで制作を行なっていましたが,今回の一連の作品では,装置が映像情報として記録され,物質から情報へといった社会の変化を思わせます.また,戦後日本がもつ欧米文化への憧憬や,大量消費/大量廃棄社会,日本における輸入文化需要のあり方へのアイロニーや批評も込められています.