ジョージ・ソロス / 投資と慈善が世界を開く

03.「再帰性」理論と錬金術

 ソロス自身が述べるように,金融界と政治界において彼に成功をもたらした観点は,いくつかの抽象的な哲学的観念にもっぱら依拠している.ソロスは長いあいだ,自分がユダヤ人であることを卑下する気持ちに苦しめられてきたが,しかし普遍的な富と知,すなわち,巨額の富と,経済社会に関する普遍的な哲学とを生み出すことによって,ある種の救いを得るにいたった.
「同じように大儲けした人がいるとしても,私とそういう人の大きな差は,私の関心の中心が思想にあり,自分自身のためにはあまりお金を使わないという点である」.このように述べるソロスは,なるほど思想家としても意義深い構想をもっている.その内容を検討してみよう.

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