このダイナミックなコラージュにおいて，ブルッフはメディア広告や第二次世界大戦の記録資料の断片映像や反復的映像により，脅威や武力の強力なメタファーを構築している．よく知られたテレビ・コマーシャルから取り込まれた中心となるイメージは，魅惑的であり風刺的である．デュラセル・バッテリーはパチンと大きな音をたてる．何度も繰り返し出てくるこの暴力的な動きの中に，長崎の原爆，アメリカ人の爆撃機パイロット，戦時の破壊行為の航空からの光景，核爆弾の犠牲者，アーティスト自身の顔がフラッシュ・フレームのように瞬間的にインターカットされる．ブルッフは，戦争や資本が及ぼす暴力に関連する話法を組み立てて，媒介された映像を通じ，連想のランドスケープを構築している．広告，第二次世界大戦での破壊やブルッフ自身の映像の攻撃的な集合を通して，ブルッフは人々の共同的な記憶のシニフィアンとしての「軍隊とマスメディアの表象的・歴史的な装置」という文脈の上に現代のアイデンティティを位置付けている．

《Das Duracellband (The Duracell Tape)》1980