ブルッフの作品の中でも最も還元的であり，催眠的な本作では，ブルッフは未来風の「兵器」（実際にはただのアンテナ）の視点から鑑賞者に対峙する．逆再生されるワルツの断片のシンコペートしたリズムは，歯切れよく反復するブルッフ自身が半回転する映像に幻惑的な効果を与えている．ブルッフは，攻撃し，また，攻撃され，攻撃者と犠牲者という二つの立場を持つ．個々間においては，通信技術の象徴は詰まるところ武器の姿のみならず，ブルッフが依代とする防具の姿として見なすこともできる．《Jeder Schuss ein Treffer》は，通信システム技術と軍隊とを明示的に融合させ，そこにアイロニカルな転回を与えている．

《Jeder Schuss ein Treffer (Every Shot a Hit)》1984