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《不規則な音》 [2015] “Sounds of Irregularities”

上田真平

《不規則な音》

作品解説

技法:予め吹きこまれた音響のない(もしくはある)レコード

私たちは生の楽器から発生する音も,録音され装置から再生される音も総じて音楽と呼んできた.しかし,これら二つの音は発生の起源が異なるという点において,本質的に区別されるべきである.したがって,再生される音を発生する音のコピーとみなさない態度がここでは相応しい.だとすれば,録音された音を聴くという行為は,過去の聴取経験を再現することではなく,それ自体が固有の経験なのだと言えるだろう.この見解に到達するために,私は次のような方法を採用する.

Adobe Illustratorで描いた正弦波および円弧を溝として紙の上に刻む.刻まれた溝をレコードとして再生し,その音を録音する.録音された音の波形を溝として,再び紙の上に刻む.このようにレコードの作成と,再生,録音を繰り返すことで音は徐々に変化していく.そうして顕在化する音の変化の過程は装置が引き起こしたものだ.つまり,ここで聴かれる音とは装置自らが生成した音なのである.

かつてアルビン・ルシエは録音と再生を繰り返すことで生成される音を,空間の持つ共振周波数だと言った.このように,機能の反復は技術や技法に潜在した「必然性」を引き出すことを可能にする.本作品はそうしたルシエの実践に倣い,技法「あらかじめ吹き込まれた音響のない(もしくはある)レコード」の反復を試みた.そして,技法に潜在する「針の擦れる音」などの「必然性」を摘出し,再生される音が人間の身体から独立した固有の音であるということを表現しようと考えた.

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