プロジェクトに関わるメンバーが「記憶」について一人一人の考えや意見を交わすことから出発し,そこで発生してくる共鳴や差異を様々なかたちで発展させて出来上がったオムニバスのようなこの作品は,圧縮された多くの記憶の断面を時間軸上に組み上げて出来る,一本の直線で出来た迷宮を舞台上に創り出す.舞台全面を覆う半透明のスクリーンは,まるで記憶のように,向こう側にいるパフォーマーの姿を,スクリーンに近づくとはっきりと,遠ざかるとぼんやりと曖昧なものにする.情報が極限的に集積され舞台上を覆う映像と音響の流れの速度と密度が人間の知覚の限界に迫るとき,それは過剰露出されたフィルムのように真っ白な状態に近づいてゆく.あたかも落下しながらほとんど静止して見える凍った瀑布のように.
text: dumb type
パフォーマンス初演:1999年 「Festival de danse」ル・マネージュ国立舞台(フランス) 出演:大内聖子,川口隆夫,砂山典子,田中真由美,藤原マンナ,前田英一,薮内美佐子,尾﨑聡 撮影:虹映社[2000年 シアター・ドラマシティ(大阪)] 映像編集:高谷史郎 音楽編集:池田亮司 75分 カラー 2000年 © dumb type