数字が記されたRFIDタグ内蔵のカードを選んで身につけて庭の中に入ります.計算式が記されたゲートを通過するごとに自動的に行なわれる演算によって,選んだ数字が「73」になればこの庭から出ることができます.《計算の庭》は「計算」という抽象的な概念を,参加者が数字に置き換わって「計算されること」をイメージしながら,身体を使って計算するための装置と言えます.
ゴールの「73」にたどりつく経路を最初に見通すことは難しいでしょう.最短では,4回の演算でゴールできる数字を選んだとしても,多くの場合,試行錯誤を繰り返して5回以上ゲートを通過するという分析結果が得られています.最短経路の一部が描かれた「状態遷移図」は,最適なシステム構築をする際などに,システム全体の挙動を俯瞰するためのツールとして使われているものです.しかし,《計算の庭》での計算行為は最短な演算が必ずしも最適と考える必要はありません.ゴールの「73」という数字そのものはひとつしかありませんが,参加者それぞれが迷い,考えながら過ごした時間,計算式,ゲートをくぐった経路をプリントアウトしたマップもすべて,「73」にたどりつくための思考のプロセスであると同時に,「73」がさまざまな形で置き換えられたものと考えることができます.
助成:財団法人中山隼雄科学技術文化財団
制作協力:大日本印刷株式会社,タカヤ株式会社,有限会社トータルインテリア スガハラ
制作スタッフ:石川将也(グラフィック・デザイン),安本匡佑(ソフトウェア開発),藤田至一(デバイス開発)