eナントカに ITうんちゃらについての断想
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3. まとめのようなもの 特に上の生産性の議論で注意しなくてはならないことは,パイの取り合いにしても,既存手段の代替にしても個別企業にとってはいずれも大問題だということ.バーンズ&ノーブルにしてみれば,アマゾンに客をとられてしまうのは大問題.情報装備は死活問題で,だからこっちも情報化しなくては,という話は当然成立する.また,郵政省にしてみれば,国際郵便の扱いが減って頭が痛いところなのはまちがいない.自分でもなんとかそれに対抗するような仕組みを考えなくてはならないだろう.しかしながら,それは経済全体の話とはまた別物,ということ.世のなかでよく見るIT革命とやらの議論は,こういう個別企業にとっての問題と,経済全体にとっての問題とをごっちゃにしたまま議論しているので,多くがわけのわからないことになってしまっているのだ. 最初の部分で述べたように,eナントカたちはあらゆる意味で,決して既存のビジネスをとりまく制約条件から逃れきれているわけではない.ドット・コム企業たちも,いまは駆け出しだということと,まあ必ずしも根拠があるわけじゃない期待のおかげで,収益性をはじめとするいろいろな条件については大目に見てもらえている部分がある,というだけにすぎない.いずれこれまでの企業とまったく同じ力学にさらされることになる.でもそういう個別のビジネスにとっては,現在発生しているこうした各種の代替ニーズや,パイの取り合いのための情報装備ニーズは,大きなビジネス・チャンスであることはまちがいない.さらにいまのeナントカとかのよいところというのは,ちょっとしたテクノロジーをてこにして,あまり実績のない小さなプレイヤーであっても,いままでに比べてずっと簡単にそうしたチャンスに食い込めるということだ.そのなかで,少し既存のルールを変えられる部分というのも,わずかながらあるだろう.いま,大目に見てもらえているあいだに,いかにしてその機会をとらえて実績をつくるか――つまらないけれど,話はしょせんそれだけのことなのだ.ただ,その 「それだけ」をどれだけのeナントカが実現できているのか,ぼくは疑問だと思う,ここまで述べてきたいろんな条件を考えると,とてもモノになるとは思えないモノがえらくもてはやされていて,ぼくはかなり不安を感じてはいる. |
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