Feature: 500 Books for  the 21th Century


情報は自由を求めている

池田信夫



ナプスターの衝撃

インターネットに妖怪が出る――ナプスター(http://www.napster.com)という妖怪が. 古いメディアの世界の既得権者は,この妖怪を退治しようと,神聖な同盟を結んでいる.RIAA(全米レコード工業会)は,ナプスター社を「著作権侵害」とする訴訟を起こし,ヘヴィー・メタルのバンド「メタリカ」は,ナプスター社の登録メンバーから彼らの曲をもつ数万人のユーザーを削除させた.

ナプスターは去年,当時19歳のノースイースタン大学の1年生,ショーン・ファニングが開発したソフトウェアで,これを使うと,全世界のユーザーのもっているMP3[★1]ファイルを検索してコピーできる.

この仕組みはきわめて簡単で,下の図のように,ナプスターを起動すると自動的にサーバに接続する.ここで曲名を検索すると,そのMP3ファイルをもっているユーザーのリストが出てくるので,そのなかからコピーしたいファイルをクリックすると,直接ファイルが転送されてくる.これによって結果的には,全世界のユーザーが個人的にもっている音楽ファイルを無料でコピーできるようになった.いわば,他人のレコード棚をのぞいて「それ貸してよ」と言ってコピーするようなものだ.

現在のパソコンの処理速度は1ギガヘルツ,ディスクは数十ギガバイトと,かつての大型コンピュータをはるかにしのぎ,また米国ではケーブルモデムやDSL(デジタル加入者回線)などの普及によって数百kbpsの常時接続が実現し,かつて汎用機が専用線でつながっていたのと同じような環境がパソコンで利用可能になっている.これを端末としてではなく,サーバとして使おうというのは,考えてみればきわめて自然な発想である.


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