21世紀に伝えたい本

後藤――昨秋,オペラ《LIFE》をきっかけにcodeというプロジェクト(p.15参照)を僕らで立ち上げましたけど,かつての本本堂の発想をいろんなところで発展させてくことになるでしょうね.もちろん「現在進行形の本」もあるだろうし,ネットを使った販売から,回収の実験もしてみたいし.「本」自体もいまの流通では困難な実験的な試みもできるだろうし.第二の『未刊行目録』とかもつくりたいですよ(笑).(p.13, p16参照)

坂本――いつもツアーをやるたびに,後藤さんとか中島英樹さんと組んでブックをつくってきたでしょ.こうやって,あらためて見てみると相当いいのをつくってるね(笑).

後藤――自画自賛しちゃったりして(笑).ところで「21世紀に伝えたい本」ってことなんですけど.

坂本――特に,この一冊みたいな感じではないな(笑).ヨーロッパってところには,本を大事にしてきた歴史があるでしょ.梯子をかけてのぼっていくような大きな図書館がある.ああいう,すべての本が収蔵されている図書館があれば,それでいいんじゃないかな.あとはインターネットでいいんじゃない? 僕にとってインターネットっていうのは,日々アップデートされていくエンサイクロペディアだって思ってる.しかも著者がいないね.だからその情報が真実かどうかわからないっていう.要するにオーソリティがない辞書.

後藤――僕は図書館はすごく行くんですけど,閉架で,死蔵されてる本がすっごくあるって驚きますね.もちろんインターネットは便利だし,編集にはもちろん欠かせないんだけど,やっぱり本をつくるってことからすれば,昔の本は現物を見て触らないと,と思います.だから,触覚っていうか,逆にそれが重要だって個人的には思ってますけどね.

坂本――ヨーロッパとかアメリカだとね,ある人が図書館に行って,こういう研究してるから調べたいと図書館員に話すとね,「わかったわ」と言って,何冊かの本を揃えて出してくれるのね.だから図書館員になるには,すごい知識が必要なのね.

後藤――日本だとそうはなってない.かえって神田あたりの古書店員のほうが,すごい目利きでしょうね.彼らは全部読んでなくったって,どの本とどの本が関係あるかわかって棚に並べられますから.

坂本――そういう「知識のYahoo!」みたいなものが必要だよね.いい編集者って,極端に言えばその本を読んでなくたって,価値があるかないか判定できる.そういう編集者は,まわりに博学な人をもってるし.そういう点で言えば,浅田彰さんは,究極の編集者だよね.

後藤――そう,必要な本は持ってるし,引用部分はバッチリ押さえられるし.相談すれば,すぐコピーが送られてくる.

坂本――ポイントに線まで引いてある(笑).検索できて,目利きときてるし.

後藤――あっ,そうか.21世紀には浅田彰を残せばいいってことですか.

坂本――あー,そうだ!! 推薦図書,浅田彰.「一家に一台,浅田彰」.

後藤――クローンですね.ドリーみたいに.

坂本――そう,大量生産して.浅田彰が牛から出てきたらすごいね.シュールなんてもんじゃない.ブルトンも真っ青だね(笑)

[2000年3月11日]



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