21世紀に伝えたい本

後藤――作家の方々もご自宅にいらっしゃったでしょう?

坂本――夜中に起きてみると,小説家が来ていて,朝までワーワー騒いでることがよくありました.子ども心に,高橋和巳とか小田実,開高健とかっていう名前を憶えていて,作家っていうのは酒を飲んでよく話す連中だって思ってた(笑).

後藤――お父さんは家でも作業されてたでしょう?

坂本――してましたね.生原稿っていうのか,原稿用紙を綴じたものが,ものすごい量ありました.中学生ぐらいになると,自分の読みたい本が出てきまして,それは父が編集したものではないんですが,勤めていた出版社が出していた外国文学で,ふと目に止まって読んだのが,バロウズの『裸のランチ』[II]だったり,ポーリーヌ・レアージュの『O嬢の物語』[III]やバタイユの『眼球譚』でした.内容は全然わかんなかったけど,ものすごくカッコイイと思った(笑).

後藤――写真集とか画集とか,ヴィジュアルものは?

坂本――そういうものもありましたよ.父が担当していた現代の日本文学はあまり読まなかったけど,外国文学全集とか,画集とかはよく読んだり見たりしました.それこそ,アルタミラの洞窟から20世紀のキュビスムやシュルレアリスムまで.学校から帰ってくると,夕暮れまでずっと一人でぼーっと画集を見ていたのを覚えています.特に好きだったのは印象派.あとは,キュビスムのブラックが好きで,真似してスケッチを描いたり.でも絵の才能はないとすぐわかったんですけど(笑)


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