ICC Report

シンポジウム

デジタル・バウハウス関連イヴェント

「ICCデジタル・バウハウス」
8−9月



「デジタル・バウハウス――新世紀の教育と創造のヴィジョン」展(1999年8月6日−9月19日)に関連し,「ICCデジタル・バウハウス」と題して,さまざまなイヴェントが行なわれた.これは会期中,ICCがテンポラリーなデジタル・バウハウスとして機能することを目的に実施されたものである.

具体的には,シンポジウム,アーティスト・トーク,ワークショップ,パフォーマンス,フィルム(ヴィデオ)上映の各分野で行なわれ,「海市」展以来の多彩かつ数多い関連イヴェントが開催されたことになる.

計3回開かれたシンポジウムは,基本的に展覧会に参加した各学校,組織の代表者を中心として,それぞれのテーマに基づき行なわれた.

◎シンポジウムI「映像とメディア教育の未来」 8月6日
パネリスト:アラン・フレシェール/伊藤俊治/深川雅文 ル・フレノア国立現代芸術スタジオ学長,アラン・フレシェールを招いて行なわれた初回のシンポジウムでは,本展の監修者でもある伊藤俊治による展覧会のコンセプトがまず語られ,深川雅文によるバウハウスの今日的な意味についての補足があり,続いてフィルム(映画)制作を基本とする,ル・フレノアの個性的な教育プログラムの紹介が行なわれた.

◎シンポジウムII「拡張するメディア環境と身体」 9月15日
パネリスト:ゲオルグ・トローゲマン/アンドレアス・ブレックマン/四方幸子 第二回はケルン・メディア芸術大学の副学長ゲオルグ・トローゲマンを中心として,同校の紹介がなされた後,オランダ・V2オーガナイゼーションのアンドレアス・ブレックマン,四方幸子によるヨーロッパの最新のメディア系組織,団体などについての情報やウェブ作品の現在などが語られた.

◎シンポジウムIII「メディア教育におけるアーティスト・イン・レジデンス・プログラム」 9月19日
パネリスト:坂根厳夫/タマシュ・ヴァリツキー/クリスタ・ソムラー/岩井俊雄 第三回はIAMAS学長の坂根厳夫が座長となり,IAMASでレジデンスの経験がある3組のアーティストを招いた.各アーティストのレジデンス時代の作品が紹介され,未発表,未公開の作品などもふくめて,制作現場の臨場感あふれる内容であった.

◎アーティスト・トーク 8月7日
講師:関口敦仁/橋本英之/トニー・ブラウン/大島祐司/クリスチャン・ケスラー/オリバー・シュワーベ/ティルマン・ロトスパイク/ほか アーティスト・トークはギャラリーAにおいて展示された作品(作家)を対象に行なわれた.メディア・アートの展覧会はインタラクティヴな作品ばかりとはかぎらず,鑑賞者がその作品の基本コンセプトを理解することは容易ではない.特に作品モニター上のメッセージなどが外国語の作品や,何らかの歴史的な背景=コンテクストをもった作品の理解には,こうしたアーティスト・トークはきわめて有効であった.

◎ワークショップ
講師:椿昇 9月3−5日 講師:渡辺誠 9月7−12日  ワークショップは2期に分けて行なわれ,まずギャラリーAのIMI作品を素材として,椿昇による体験型のワークショップがあった.「ミブリ」という衣服状のインターフェイスを着用し,参加者と講師がジャンケンをしながら画像をコントロールするなど,非常にユーモラスな内容であった.またこのIMI作品を用いて学生などによる小パフォーマンスも会期中数回行なわれた. 続いてギャラリーDで行なわれた渡辺誠によるワークショップは,展示中のインスタレーション作品に使われたポールを,さまざまなアイディアに基づいて再配置するというものであり,その都度参加者の意見を交えながら行なわれた.移動,再構築が非常に容易な素材でもあり,参加者の自由なアイディアによって,作品は短時間で様相を変えていった.

◎パフォーマンス
山路敦斗詩 白と黒で(モノクローム・ミュージック)/高嶺格 K.I.T 9月17日 山路敦斗詩 白と黒で(モノクローム・ミュージック) 9月18日 パフォーマンスはIAMASからの2組のアーティストによるもので,それぞれ音と映像を効果的に組み合わせるものであった.ギャラリーDの山路敦斗詩によるパフォーマンスは,ピアノ2台による演奏に,光の明滅のみの映像が連動するもので,静的かつミニマルな印象を与えた. 対照的に5階ロビーで行なわれた高嶺格のパフォーマンスは,ドラム4基の演奏と,巨大なスクリーンを背景にダイナミックな展開を見せた.

◎映像作品上映
会期中の毎金曜日,シアターで行なった映像作品上映であるが,ル・フレノア国立現代芸術スタジオ,ケルン・メディア芸術大学両校の教員,学生のフィルムやヴィデオが上映された.特にヨーロッパの学生の映像作品に触れる機会の少ないわが国では,その映像へのアプローチに新鮮さを感じさせる作品が多かった.

(後々田寿徳)

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