ICC Report

映像表現の中の時間と空間

映像表現の中の時間と空間
―ICCコレクションから

第1期:1998年4月24日−5月28日
第2期:1998年5月30日−6月25日
ICCシアター



ICCでは国内外のヴィデオ・アート作品およびフィルム作品(フィルムよりヴィデオ変換したもの)をコレクションとして収蔵している.今回の企画上映では,その中の一部を表現上の手法/技法という観点から「反復/複製」,「合成/コラージュ」,「編集/カットアップ」,「構成」の4種類に分類し,これらの映像作品が通常の「モンタージュ」にとどまらない表現技法によって時間と空間を操作し,どのように独自の映像言語を創りだしてきたのかということを検証しようとしたものである.

「反復/複製」に分類したクラウス・フォン・ブルッフの作品《Das Duracellband (The Duracell Tape) 》(1980)では,題名どおりデュラセル乾電池のコマーシャルから抜粋された短いシークェンスが執拗に反復される.そこに第二次世界大戦における爆撃機の映像などの記録映像が挿入されることによって,何か不穏なリズム(時間)が醸し出される.映像は短いシークェンスの反復(時間があるところ以上進行しない)を続けながらも鑑賞者は増していく不安のようなものを意識したことだろう. また「構成」に分類した出光真子による《加恵,女の子でしょ!》(1996)では日常生活における性差の問題を,プロジェクタやモニターを演出上の装置として使用することによって文字どおり「ヴィデオ・ドラマ」として仕上げている.

これらの映像表現はおもにヴィデオ=電子映像というメディアの出現に負うところが大きいが,今回は松本俊夫のフィルムによる先駆的な実験映像などを含めた構成をとった.

[畠中実]

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