InterCommunication No.15 1996 |
Monograph |
さてまず,〈決定論的カオス〉についての概略を述べておこう.ここでは,決定論的カオスの概略を知るのに,きわめて有効な入門書と思われる合原一幸『カオス』の記述をキーワード風に紹介する形で概観に代える[★1].
●カオスとは,あるシステムが「ある時点での状態(=初期値)が決まればその後の状態が原理的にすべて決定される」という決定論的法則にしたがっているにもかかわらず,ひじょうに複雑で不規則かつ不安定なふるまいをして遠い将来における状態が予測不可能な現象のことである.(p.149)
これまでの力学の世界観は次のようなものであった. しかし,決定論的カオス研究は,「きちんとした法則に従うシステムが,乱れる外部要因がまったくないにもかかわらず,おどろくべき複雑さをそれ自身の法則によってつくり出す.そして法則がわかっていてもそれらからその法則に従うシステムの将来の状態を完全に予測することは,初期状態を無限の精度で正確に知るという実現不能な要求が満たされない限り不可能である」(p.58)ということを明らかにした. ●カオスは周期的ではない,ひじょうに複雑な非周期的現象である.したがって,アトラクター上の軌道も二度と同じところに戻ることはない.(p.86) 以上,決定論的カオスについてのイメージを掴むために,合原の記述を羅列的に紹介した.
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