ICC

ビル・ヴィオラ(1951年,ニューヨーク生まれ)は,ヴィデオ・インスタレーションをおもに制作し,ヴィデオ・アート/メディア・アートという枠を超えて,現代アートの世界でも第一線で活躍し,国際的に評価を受けている作家です.1972年よりヴィデオを用いた作品を制作しはじめ,以後94年まで制作されるヴィデオ・テープ作品はもとより,身体的なリアリティをもって空間的に展開されるヴィデオ・インスタレーション作品や,2000年以降の高精細映像による絵画的映像表現は,その思索的でスケールの大きな,テーマ性の強い作品などにおいて高い評価を得ています.

NTT インターコミュニケーション・センター [ICC]では,1975年から94年までの,作品集を含むヴィデオ作品と作家のドキュメンタリー映像をコレクションとして収蔵しています.その作品は,わたしたちの世界の微視的な現象を記録し,その時間軸や空間などをヴィデオという装置を用いて操作することによって,世界の持つ不確かさや曖昧さなどを顕在化させるものとなっています.映像と音響に対する精緻な編集により生み出される,この抽象化された世界を提示する作品は,ヴィデオというメディアの特性を生かした,言葉どおり「ヴィデオ・アート」と言えるものでしょう.また,伝統的な民族文化への関心からフィールド・ワークに携わり,南太平洋のソロモン諸島を訪れ民族音楽や舞踏を記録するなど,映像人類学的な活動も行なっており,こうした記録映像の分野においても評価を得ています. 本上映は,森美術館(東京・六本木)で開催される(2006年10月14日(土)—2007年1月8日(月・祝))「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」展に連動して,日本で滞在制作された《はつゆめ》(1981)を含む,当館のコレクションであるヴィオラのヴィデオ・テープ作品30作品を上映し,作家の歩みを概観するものです.