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はじめに |

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この度,NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]では,『FUTURE CINEMA——来たるべき時代の映像表現に向けて』を開催いたします. 本展覧会は,ZKM(アート・アンド・メディアテクノロジー・センター, カールスルーエ)によりプロデュースされ,本年9月までKIASMA(フィンランド国立現代美術館, ヘルシンキ)でも開催された世界巡回展です.ICCでは,26名の作家による最新のメディア技術を駆使した29点の作品を展示し,映像表現の未来形を多角的に探る試みとなります.
現在,映像をめぐる環境は急速な変化を見せています.日常を見渡せば,映画やテレビに加えて,コンピュータのディスプレイ,テレビゲーム,携帯電話やカーナビ,スーパーマーケットのレジやキャッシュディスペンサー,あるいは街の巨大ディスプレイなど,私たちの生活はますます映像で満たされてゆくことを実感できます.現代の社会において,映像は人間と情報とのインターフェイスの鍵として,多様に私たちの日常へと浸透しています.マルチメディア技術の発展は,あらゆるものを映像と結びつけようとしているのかもしれません.
「映像」の世紀と言われる20世紀には,主に映画やテレビが映像の歴史を作ってきました.そこでは映像における物語の構造や,制作と鑑賞の関係性,さらに社会的そして産業的な意義に至るまでの方法論が培われてきました.そして「映像」は現在において,伝統と新しさの狭間でその表現方法や在り方が模索されています.映像が映像である限り受け継がれてゆく手法があることも確かですが,同時に映像の在り方が新しいほどその輪郭は映画やテレビから離れてゆくことも事実です.現代は映像の変革の時代であり,混沌の時代であり,それは言い換えれば可能性の時代なのです.
そうした時代に,想像力とメディア技術とを駆使するアーティストたちは,それぞれ独自の視点で「映像」を捉えるべく模索しています.ここで展示される作品は,マルチプロジェクション型,ヴァーチャル・リアリティ・システムによる没入型,ネットワーク型,インタラクティヴ型,データベース型など,多岐の手法にわたっています.そしてそういった技術の上で展開される表現のいずれもが,「来たるべき時代の映像表現に向けて」制作された,まさに映像表現の現在形の諸相であるといえるでしょう.そこに変革と混沌,そして可能性を見出し,過去−現在−未来に続いてゆく映像の在り方を予感するならば,なにより私たちの日常の視点も変わってゆくに違いありません.
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