ICC





はじめに
入場料
展示作品




《Web of Life》
参加作家




2002年12月20日(金)—2003年3月28日(金) エントランスロビー


展示作品


《Web of Life》
2002年
ミヒャエル・グライヒ + ジェフリー・ショー + ベルント・リンターマン + ローレンス・ウォーレン + トローステン・ベルシュナー + マンフレッド・ウォルフプロテッグ + アンドレアス・クラツキー + ファビアン・ニコライ










写真:大高隆


作品に設置されたスキャナーが鑑賞者の手のひらの線を読みとり,その情報がシステムに送られることで,テーマに関連した映像と音響のタペストリーが,アルゴリズムに基づいて刻々と変化してゆきます.各会場では,二つとして同じもののない手相の線が,スキャンされた場所のキャプションと共にスクリーンに映し出されます.スキャンされた手相の線は変形しながら画面上の映像にとけ込んでゆきます.映像も音響も,そして手相の線も全く同一のものはなく一回ごとに異なる様相を見せます,こうして鑑賞者は,ネットワーク型の作品に自らも参加し,そこに新たな息吹を与えることになります.つまり装置に手を触れることで,多様なテーマから成る視聴覚の相互関係のめくるめく世界の扉を開け,《Web of Life》の一員となるのです.

作品展示は,《Web of Life》の中核をなすネットワーキングの論理を体現するため,ZKMにおける三次元映像の大規模なインスタレーションのほか,四つの端末が世界を巡回します.ここでの展示もその一環となっています.各会場の展示はインターネットによって相互接続し,各会場の鑑賞者のデータが全会場に影響を与えています.ネットワークの根幹をなす「多数参加」そして「相互作用」を体現するとともに,常に新しく生まれる「ネットワールド」のモデルともなっているのです.また手相の線をスキャナーに読みとらせるという行為は,自分のアイデンティティの一部を,変容を続ける芸術作品のアイデンティティに重ね合わせることに相当しています.また映し出される画像の多様性,そして新たな情報を受けて不断に変化を続ける構造体の複雑な遠近法により,このプロジェクトの持つさらなる意味が示唆されます——すなわち主観/客観といった境界を超越した状態,あるいは物質的/非物質的,アート/データ,人間/機械,観察者/参加者,自然/人工といった二分法を超越した状態が表現されているのです.

《Web of Life》は有限個の要素の集合体ではありません.それは相互関係の網であり,ひとりひとりの異なる手相の線に感応して変容する有機体です.そこでは予測不可能なアルゴリズムを持つ映像・音響と,スキャナー端末から送られるデータの流れの構造が絡み合っています.インターネットは一個人の因果関係モデルから,人と人の間に生起し続ける行為モデルへとその思想を拡張させつつあります.《Web of Life》は美的・構造的側面からこの思想を説明し,同時にその本質的体験を喚起するための象徴です.そして「独立した個人がネットワークを共有する」という尽きせぬ言説の場へと人々を誘うのです.