




《Voyage》 2002
写真:TAKATANI Shiro

《Voyage》 2002
写真:Emmanuel VALETTE
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新作について
高谷史郎(ダムタイプ)
質問:畠中実(ICC)
——ダムタイプはこれまで,高度情報化社会やジェンダー,エイズなどをめぐる問題,生と死の境界,記憶といったテーマを表現されてきましたが,今回のインスタレーション作品についての,コンセプトなどをお聞かせください.
人はいろいろな環境の中で,いろいろな方法で情報をつかまえようとします.それはもともと関係のなかったものどうしに,ある関係をつけ情報を構成して,整理していくという"思考"に限りなく近い作業です.情報が形を作り始める,その瞬間に着目して,それはどう生成されるのか?また何がはじめにあるのか?などについての作品になると考えています.
——それは具体的にどのようなものになりますか?
言葉で表現するのは難しいですが・・・.
情報になる前の出来事のかけらみたいな物でできた海の中を,移動しながら何かを発見していく感じになるのかもしれません.
——いままでパフォーマンスとインスタレーションを平行して制作されていますが,ダムタイプにとって,その両者の関係とはどのようなものですか?
ダムタイプという集団に,時代に対する一つの共有できる感性があるとすると,それに対して表現方法が幾通りか存在していて,そのうちの2つがパフォーマンスとインスタレーションなのだと考えています.参加メンバーの違いなどはありますが,どちらかが優先されるとかいう関係は全くありません.どちらかというと,足りない部分を補い合っている関係だと思います.
その他にも,印刷物,CD,ヴィデオ等のメディアでの制作もしていますが,それらのメディアは個人でも制作可能な部分が多くなり,メンバーそれぞれ個人の作品として発表できる機会も増えましたが,そのことで,より一層ダムタイプとして作品を作ることの意味が問われるようになってきたと思います.
——これまでの活動の変遷の中で,《Voyages》はどのように位置付けられますか?新しいフェイズ(あえていえば「旅」)の始まりとでも言えるようなものでしょうか?
ダムタイプにとって,新しいプロジェクトの始まりはいつも,新しいフェイズへの移行を意味するので,今回特にそれを意識したわけではありません.どちらかというと,「旅」,「航海」などの言葉からくる,不安感,期待感が気に入ったのでつけたタイトルです."新しいフェイズの始まり"だと思いますが,それは何も"新しい海"が目の前に開けているというのではなく,今までと変わりない海が,その見る者の受け取り方次第で,新しく見えてくるのではと考えています. |