ICC





はじめに
入場料
参加作家
イヴェント




レクチャー
10月3日
10月10日
10月11日
10月13日
発表資料:伊福部達
発表資料:入江経一
 
1998年10月 3・10・11・13日 [終了しました.] ギャラリーD





イヴェント


レクチャー第4回:身体・感覚・コミュニケーション(実践編)

講師:入江経一(建築家)


私達はものや情報の交換,コミュニケーションの場として,身体と空間,感覚と情報の関係に慣れ親しんできた.長い歴史のなかでそれらは世界中に都市という空間的編物を織り,様々な文化の多様性を豊かに築いてきた.だが,電子ネットワークによるコミュニケーションは,こうして長い間に培われてきた身体化されている時間と空間の鋳型を,追い越してしまった.たとえば現実の都市にはノードとノルムが存在する.ある場所からの移動は,距離と時間を伴う.それがどんな移動速度であれ,我々の感覚はその速度と距離をある一定の基準において計測し,身体の移動の感覚を失わない.そこでは世界は身体的なスケールで捉えられようとしている.逆に言えば,世界を捉えるには身体が求められている.身体についての学習方法に昔から多くの例があるのをみても,(東洋医学,ヨガ,アントロポルモフィスム,ギリシャ的カノン,舞踏など)科学的方法とはことなる認識で身体と世界を眺めていたことがよくわかる.

しかしネットワーク空間にはノードがあってノルムがない.ここは身体的尺度が存在しない,まったく新しい質をもった空間だ.この距離とそのストレスをもたない空間は,高速でリンクしてゆく,非平面的な,非立体的な場である.ここは都市ではないので,一切の現実のメタファーは持ち込まないことだ.そこでははじめて,危機感のようなものに出会う.わたしの身体と感覚はどこにあるのかと.

ここでの感覚,身体,意識の在り様は,既に我々の記憶と現実を大幅に書き換えていることは間違いない.しかしそれで世界観が変わるというのは,曖昧でむしろ誤解を生む.こうした経験を,二つの現実に分裂させることをやめよう.現実とヴァーチャルとを二つの対立し合う世界と考えることは,もう意味を持たなくなる.それよりも,こうした質の異なる環境がどの様にこの世界を形づくってゆくかを見るべきだろう.新たな経験の中で感覚が変容してゆくのではない.変容を感覚するのだ.