レクチャー第1回:(総論)身体・感覚・コミュニケーション
講師:服部桂(朝日新聞社)
歴史的に見ると,文明の拡大はいわゆる「人間の拡張」とともに,身体と感覚をコミュニケーションの場から消去していった.しかしそれらは明示的には見えなくなっただけで,結果的には歪みとして提示されてきた.新しいメディアが現れるごとに世界と身体の比率は変容していき,最も基本的な認識の単位としての時空を捉える感覚の変容が人間の世界観を大きく変えることで,さまざまな混乱を引き起こしてきた.特に20世紀のメディア環境の大きな変容は,それまでにない世界規模の激変をもたらした.近年においては,コンピュータやインターネットによるコミュニケーション環境の変化が,我々の持つ現実の把握の仕方に大きな影響を与えている.21世紀に向けて情報社会のあるべき姿を考えるには,手段としての新しいメディアにのみ注目するのではなく,それを受容する我々自身の身体と感覚に再び立ち戻るべきではないだろうか.
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