ICC





はじめに
入場料
参加作家
イヴェント




レクチャー
10月3日
発表資料:佐々木正人
発表資料:服部桂
10月10日
10月11日
10月13日
 
1998年10月 3・10・11・13日 [終了しました.] ギャラリーD





イヴェント


レクチャー第1回:(総論)身体・感覚・コミュニケーション

講師:佐々木正人(東京大学)


どのようにすれば行為について生態学的に妥当な(つまりあたりまえをそのまま肯定できる)観点を得ることができるのだろう.生態心理学の三つのキーワードを示したい.

第一はアンビエンス(ambience).行為は光,振動,化学的放散によって独特に包囲されているということである.感覚器は刺激を入力するのであるが,感覚器を全身の運動に埋め込んで成立する知覚システムは,これら私たちを包囲するエネルギー場の中で作動している.包囲されていることを認めると注意についての見方が一変する.注意とは選択と統合が同時に起こることである.二階の書斎にいる私は,階段を登ってくる人の足音と庭の虫の音の両方を同時に知覚している.細部と全体は矛盾していない.同時に在る.

第二は生態学的情報.情報とは包囲する光,振動,化学的放散,力学的出来事に身体が触れたときに起こる変化の中で,私たちの行為にとっての意味となるアフォーダンスを特定する不変なことである.たとえば光の中にある情報(光学流動)を見つづけることで立ちつづけることが可能になっているが,立位の不変項は光の中の変化の中にある変動幅として発見される.光には立ちつづけることを可能にするアフォーダンスがある.知覚とは情報を得ることであるが,それは情報を探索する行為と循環しており,どちらが原因というわけではない.この知覚と行為の循環の洗練が学習である.この循環の中に(そこでだけ)私たち身体を持つ行為者は未来を予期している.

第三は多様性と選択.多数のアフォーダンスが行為を包囲している.アフォーダンスによる制約の変化が行為の発達であり,進化である.本来行為は多数のアフォーダンスに制約されており柔軟なものだが,その制約が変わることでちがった柔軟さに至る.行為による選択とは何か.それが開始されるとはどのようなことなのか.