ICC Review


「ニュー・メディア ニュー・フェイス/ニューヨーク」展関連企画
ジャリード・ローダー パフォーマンス
《コンポジット・セルズ》《オートハープ》
2000年4月23日 ギャラリーD



ジャリード・ローダーはニューヨークを拠点に活動するパフォーマンス・アーティストである.映像と音響を自作のインターフェイスによって演奏する即興AVパフォーマンスを行なっている.クリスチャン・マークレーとの共演や,昨年のアルス・エレクトロニカにおけるイヴェント,Recombinant 99への参加など近年その活動は活発なようである.

上述したRecombinant 99でも上演された(9分という短さだったが)《コンポジット・セルズ》は,大小5個の円形スクリーンをステージ後方頭上に配置し,どこかゲームコントローラーのような一対の自作のインターフェイスで映像と音響をコントロールするものである.映像と音響は一つのファイルとして扱われ,眼や歯のクローズアップやバーコードなどの映像が数種類用意され,コントローラーでそれぞれのファイルをそれぞれのスクリーンに投影し,映像の大きさや速度とそれに対応したサウンドのピッチなどを制御していた.音響はサンプル音のループやスクラッチによるもので,ときにリズミックに,ときにアンビエントな雰囲気を醸し出した.

最近作である《オートハープ》は6本の弦をはった竪琴のような形体の,やはり自作のインターフェイスを用いたパフォーマンス.弦のそれぞれにギターのストロークやヴァイオリンのピチカートなど,いろいろな弦楽器の音が割り振られ,それを爪弾くのにあわせて投影されるモノクロームの映像が,画面を縦にランダムに分割するように構成するものだった.

このようなパフォーマンスにおいては,システムやインターフェイス,映像,音響のすべてに一定の水準を保つということは難しい.実際今回のパフォーマンスにおいても,そうした問題点を免れるものではなかったかもしれない.しかし,パワーブックG3と自作インターフェイスのみによって行なわれたパフォーマンスは,今後こうした機動性の向上から,メディア・パフォーマンスという分野でのまさに「ニュー・フェイス」の出現を予感させるものであったことは特筆すべきかもしれない.

[畠中実]


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