ICC Review


「ニュー・メディア ニュー・フェイス/ニューヨーク」展関連企画
ジャリード・ローダー パフォーマンス
《コンポジット・セルズ》《オートハープ》
2000年4月23日 ギャラリーD



近年のいわゆるメディア・アートの情報は,ヨーロッパやアメリカ西海岸,日本を中心に発せられており,今世紀の美術の中心であったニューヨークからの発信は,意外に思えるほど少ない.今回のレクチャーは,ニューヨークで,1984年より活動を始め,一貫してメディア・アートを紹介してきたギャラリー「ポストマスターズ」のメディア・キュレーター,タマシュ・バノヴィッチによるもので,二ユーヨークの現況を知る貴重な機会であった.

今回の展覧会の企画にも協力したバノヴィッチは,最初にギャラリー設立の経緯などについて述べ,旧来地理的に特権的な存在であったニューヨークという場のステイタスが,近年のメディアの状況によって失われつつあることを強調した.人やモノ(作品)の集まる場という文化の中心というより,現在ではむしろ企業や組織が,アートと経済的に関与するための場とも言えるとする.

こうした状況のなか,彼の関心もネットワーク上の作品に移行しつつあるとし,レクチャーにおいてもWebを用いた作品を主に紹介した.特に注目されたのは,マシッジ・ウィスニウスキーによる《netomat》という作品(www.netomat.net)である.これは一種のブラウザ・アプリケーションであるが,通常のWebブラウザとはまったく異なるアイディアによるもので,自分が知りたいキーワードを入力すると,さまざまな検索エンジンを経由して,インターネット上に存在するテクスト,画像,音声などを自動的にダウンロードし,そのウィンドウ上にランダムに浮遊するかのように表示,再生させることができる.情報の洪水とも言えるインターネットの現状を,通常のブラウザつまりhtml形式の画一的な表現とはまったく異なったインターフェイスで見せることによって,かえってその「ハイパーテクスト」としてのオリジナルな情報の姿を再認識させる,優れたアプリケーション=作品であると言えるだろう.このほかデザインや音楽など,幅広い領域に関連するさまざまなインタラクティヴなWebも紹介され,参加者の関心を集めた.

[後々田寿徳]


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