戦争のエポック/芸術のメルクマール

また1917 年,オランダのユトレヒトから立ち上がった「デ・ステイル」グループの初期メンバーの一人だったP ・モンドリアンは,都市と自然の存在を等価と見做し,芸術のための「芸術美」ではなく「生活美」を追求する意図の下に,水平線と垂直線による幾何的抽象画へと歩みだしていく.「第一機械時代」と呼ばれた20 世紀初頭の四半世紀は,19 世紀の蒸気エンジンに象徴される熱エネルギーから,電気を家庭に送るエンジン動力に象徴される,人間のスケールにあった小型で簡単に操作できる機械に変わり,日常生活に浸透していった.
その技術革新は,第一次大戦で広く使われた機関銃の発明(B ・ホッチキスの考案)に具現化され,そのスピン・オフが家庭用品として出回っていく.戦争は機関銃によって,それまでの肉薄する接近戦から大量殺戮戦に転換し,その対抗手段として塹壕戦があみだされる.また戦車が開発された.英軍が戦車を実戦に初めて登場させたのは1916 年のことだった.

ドイツ表現主義の中心メンバー,A ・マッケとF ・マルクは本大戦で戦死し,表現主義は潰えた.1915 年6 月,マルセル・デュシャンはフランスからアメリカ行きの「ロシャンボー丸」に乗り込み,ニューヨーク前衛派に熱狂的に受け容れられ,17 年のアンデパンダン展にレディメイド作品《泉》を出品したが,委員会から陳列を拒否された.


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