戦争のエポック/芸術のメルクマール

ともあれ,マリネッティの宣言にみる「革命,メトロポリス,労働者,電気,兵器庫,造船所,駅,工場,橋,汽船,鋼鉄,機関車,飛行機」といったキーワードは,ヨーロッパの伝統的な空間と時間を消滅させ(スピード!),旧社会の清掃者として「戦争」を礼賛するものであり,そのイタリア国家統一運動のただ中で醸成された愛国的心情は,1930 ,40 年代のファシズム政治体制に接続していった.

19 世紀末には夥しい数の国家間戦争,労働運動,植民地への侵攻や民族独立の叛乱が起きたが,1898 年の米西戦争でアメリカは,95 年に発明された映画の教育的機能を早々に見抜き,ナショナリズムの高揚のメディアとして利用していった.またアール・ヌーヴォーの絶頂期の1900 年に開かれたパリ万国博覧会では,リュミエール兄弟たちが大型スクリーンでシネマトグラフの上映をして,アートとテクノロジーの出合いを演出した.


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