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ICCプレゼンツ |
ICCも開館以来はや2年が過ぎた.決して十分とは言いがたいが,専用の展示スペースをもったため,開館以前のプレ活動期間中のように,さまざまなイヴェントを行なう際に,他の施設や空間を使用することはきわめて少なくなった.自らの施設=箱をもち,すでに数々の展覧会やイヴェントを開催してきたため,当然それらの完成度は高くなっている.しかし,自らの施設をもつということは,逆に言えば,その空間の物理的な制約を受けるということでもある.ICCの構想段階からあった,ネットワーク上などの仮想空間を含めて,物理的な空間に縛られない活動を目指すといったアクティヴィティは,結果として後退してきた印象も否めない. 今回,東京オペラシティビルと共催で開催したイヴェント《ジ・アーク》は,そうした意識に基づき,ICCとはまったく異なる空間内における実験的イヴェントとして企画された.会場となった同ビル内ガレリアは,タワー(高層ビル)と国立劇場のあいだの回廊状のスペースである.ビル正面入り口から3階のコンサートホールまでのアクセス路となっており,長い階段による階層構造をもつ. まず,富山県在住のアーティスト岡部俊彦の,ジャンクによるインスタレーションによって,物理的空間の再構築を試みた.岡部の提示したプランは,ガレリアの階段上に帯状のステージを組み,その上に彼の作品を設置するというものであった.さらにステージ脇にはイントレ(足場)を組み,立体的なスケール感を確保する. つづいて,コネクテッドのプロデュースによる,NU/KE(堀川達郎),SABOTAGE,HIKARI(宮地智恵美),GRAVITY(Veronica KEES),DEEP SPACETIME(Richard SHARP),STRIDE(Justin ROBERTSON),C9などの合計10のインディーズ・ブランドによるファッション・ショーが行なわれた.モデル総数30名以上を動員し,岡部のステージ上や観客のあいだを多人数が縦横に歩くことによって,パフォーマーと観客との境界をあいまいなものとした.モデルによるアコースティック楽器の演奏も行なわれ,インスタレーションのハードな印象と好対照のショーで,観客との一体感を高めた. 最後にMERZBOW(秋田昌美+東玲子)によるノイズ・コンサートが行なわれた.膨大なPAシステムによって,空間全体をゆるがすような音量でプレイされたそれは,圧倒的な音圧によって,観客の聴覚を超えて身体感覚に直接訴えかける力をもつものであった.わが国ではいまだ特殊な音楽とされているノイズ・ミュージックであるが,広く現代音楽の世界においては,MERZBOWをはじめ国際的な評価を受けているものが多い.今回はほぼ理想的な環境でのプレイであり,そのサウンドを十二分に堪能できるものであった. 一見脈絡のないこれら三部構成のパフォーマンスを結びつけるもの,それはやはりあらゆる意味で,施設的な空間の制約から解き放たれた「ヴォリューム」感であった.閉ざされた空間の中では決して実現できないスケールのイヴェントを行なうことによって,結果としてICCという施設のイメージも超えるものを実現することも可能であろう.ICCは常に多方面に刺激を与える存在を目指したいからである.1500人を超えた今回の観客には,通常の展覧会とは異なる層が多く見られたことも特筆しておきたい. [後々田寿徳] |
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