ICC Report

ROBOTS

「共生する/進化するロボット」展関連シンポジウム/
ワークショップ/ヒューマノイドロボット・デモンストレーション/
ロボットと人間の共生実験
1999年1月29日−3月22日
ギャラリーD



「共生する/進化するロボット」展に関連して,4セッションのシンポジウム,2日間にわたるオリジナルロボット制作ワークショップ,最新型ヒューマノイドロボット4体のデモンストレーション,5日間にわたる,ロボットと人間の共生実験がICCギャラリーDにて開催された.

シンポジウムは,1月30日から2月4日,展覧会にも登場したスイス・ローザンヌ工科大学のダリオ・フロレアーノ博士,AAIの五味隆志社長,そして,NTTコミュニケーション科学研究所の下原勝憲部長の3名によるロボットの進化にまつわるプレゼンテーションから始まった. 1月30日には,神経,遺伝,生物などをどのようにロボット工学に組み込むかについて,展示の進化型鬼ごっこロボットの事例なども含めて,フロレアーノ氏がプレゼンテーションを行なった.そして,近未来の進化するロボットの可能性について下原氏が,進化のパラダイムと進化するロボットの適用領域について五味氏が,それぞれプレゼンテーションを行なった.進化に対する「評価」の与え方についての部分で会場とも議論を交わすこととなった.昨今のキーワードである複雑系がロボットの世界でも重要なテーマになっており,人々の多様化する価値観と必要とされる機能を実現するために必要なロボットの存在については2日目以降のシンポジウムへの序章となった.

翌31日にはデンマーク・オーフス大学のヘンリック・ハウトップ・ルンド氏から「ロボットと教育」の関係についてのプレゼンテーションがあった.展示,ワークショップでも取り扱われた《MINDSTORMS》を使用することで,初等教育から高等教育まで,異なるレヴェルで,昨今とりざたされている工学離れに対する処方箋として非常に有効な効果を発揮するものがあり,その具体的事例,方法論についての紹介があった.

2月3日には「ヒューマノイドロボットの現在と将来」と題して早稲田大学ヒューマノイドプロジェクトからのプレゼンテーションがあった.ヒューマノイドの概要と感性コミュニケーションについて橋本周司教授から,ヒューマノイドのためのテレロボティクス技術について成田誠之助教授から,音声対話インターフェイスについて小林哲則教授から,ヒューマノイドロボットの運動制御について,また,心理生成と表現について高西淳夫教授から,ロボットが人間と共存するために必要とされる技術について,また,人間共存とヒューマノイドの関係について菅野重樹教授から,それぞれ話をしていただいた.日本人にとって最も身近なロボットのイメージであるヒューマノイドロボットの現在の研究段階を総合的に知るうえで,一般の人々にとっても非常に貴重な機会となった. 翌2月4日には「ペットとしてのロボットの現在と近未来」について,ペットロボットを制作発表しているオムロンの田島年浩氏と通産省工業技術院の柴田崇徳氏により,人間の生活空間で機能をもつロボットが,いままでの客観的な評価に対応する物理的メディアとしての存在から,人間にやすらぎ,精神的な価値などを与える情緒的なメディアへと変遷することについて,試作されたロボットのデモンストレーションを交えながら紹介があった.

2月6日,13日の2日にわたり,「ロボットを作る」ワークショップも実施された.1月中に募集に応じた26名の参加者が,6名のNTTサイバースペース研究所研究員と6名のアシスタント(社会人,研究者,学生など多岐にわたる)の助けを借りてオリジナルロボットを制作した.制作テーマは事前の応募内容に基づいてグループを結成,グループ内で相談をしながら,助け合いながらロボットの形は徐々にできあがってきた.多くの参加者は7日−12日にも自習を続けることとなった.最終日13日午後には,笑いと歓声が来館者からも漏れる発表会も開催された.

2月20日,21日には,2月4日にシンポジウムに登場した早稲田大学ヒューマノイドプロジェクトから4体のロボットのデモンストレーションをしていただいた.初めて開発環境外での歩行となった,二足歩行ロボット《WABIAN》.明るさ,衝撃などに反応して感情表現をする,人間型頭部ロボット《WE-3 RII》.カメラで人間の顔を認識し,話しかけられた会話に返事をする,人と機械のコミュニケーション研究のためのロボット《ロビタ》.自立的に感情をもち,表現をするロボット《WAMOEBA-2》.以上4体のデモンストレーションに両日とも多数の来館者が注目した.

2月23日−28日には,本展覧会への出展アーティストでもあるヤノベケンジ氏がNTTコミュニケーション科学研究所研究員によって組み立てられたロボットとの共生実験を行なった.「1999年のロビンソンクルーソー」というサブタイトルからも想像がつくかと思うが,期間中にはヤノベケンジ氏はロボット以外との会話を行なえない.また実験中にはギャラリーD内の小屋に寝泊まりすることとなり,食料,水なども持ち込み,ヤノベケンジ・サヴァイヴァルシリーズの延長とも言える過酷な実験となった.ロボットの故障の連続,ヤノベケンジの風邪など,ロボットとの共生に必要なことを知るうえで貴重な実験となった.

[大和田龍夫]

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