ICC

概要
インターネットをはじめとするサイバースペースをある特定の人々だけのもの にしていてはならない。特権的な環境が一般大衆に開かれていくためには、単 純な商業化の論理だけでは偏った発展を強いられることになるのではないだろ うか?そこで、われわれはサイバースペース内におけるモニュメントの創造を 企画している。現実のモニュメント、例えば江戸にとっての富士山、パリにとっ てのエッフェル塔はそこに住む誰もが見ることのできるような巨大さや高さを 持っている。それは街角を曲がるたびに発見されて、人々の心の中にクサビを 打っていくのだ。新しい町には新しいモニュメントが必要だ。では、サイバー スペースにおけるモニュメント(ここではメタ・モニュメントと呼ぶ)はどのよ うに作られるべきなのか?その作られ方によって集まってくる人々が違ってく ることもあるだろう。また、その制作や進化の過程を共有することも大事かも しれない。
藤幡研究室では、当時、学部4年生であった江渡浩一郎によって始められた "PeepHole"から得られたユーザーからの反応をもとに、新しい「メタ・モニュ メント」を企画することにした。
"PeepHole"は文書によるコミュニケーションではなく、画像によるコミュニケー ションである。画像によって伝達することのできる情報は文章によるものに比 べて冗長度が高い。ということは読みとる側の自由に任された部分が多いとい うことである。"PeepHole"することによって得られた情報の高さよりも、ここ では対象に対してユーザーが主体的に情報を得ることによる楽しさの方が勝っ ていることがわかった。
対象の変化を切りとって観察する自由がユーザーにはあるわけだ。これは、 「決定的瞬間」に意味があるとする、写真論的な価値観とは異なっている。都 市におけるモニュメントが公共的な機能を持っていることと同じように、ここ でも、"PeepHole"は公共的なサービスとして機能し始めている。"PeepHole"は藤 幡研究室が見られるにすぎないわけだが、これを誰でもが知っている対象にア クセスすることができるようなサーバーを設置し、今、その時の画像をインター ネットから取り込むことができるようにする予定である。