ICC

会期:2010年1月16日(土曜)〜2月28日(日曜)

《中心が移動し続ける都市》
2009年
柄沢祐輔+松山剛士


2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンは,著書『自己組織化の経済学—経済秩序はいかに創発するか』において,資本主義に基づく資本の自己増強(自己組織化)のメカニズムが,どのように都市空間の発展,さらにその帰結として中心地と後背地といった不均衡をもたらすかを,複雑系の概念を応用した数学的モデルによって独自に説明しています.このインスタレーションは,その資本の自己増強メカニズムを逆手にとって解釈し,都市の不均衡を招く空間的自己組織化をゆるやかに解体・コントロールする方法論を,新しい幾何学と数理モデルによって提案します.動的な中心地と後背地の関係を記述する都市モデル自体が,都市の生成プログラム・コントロール・システムとなることで,自己組織化に関与する新しい都市モデルがグラフィカルに提示されます.

柄沢祐輔
1976年生まれ.慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科建築・都市デザインコース修了.文化庁派遣芸術家在外研修制度にてMVRDV(オランダ)在籍を経て,2006年に柄沢祐輔建築設計事務所設立.情報論的,あるいはアルゴリズム的な思考を軸とした建築・都市空間の探求を行なっており,『10+1』48号「アルゴリズム的思考と建築」特集(INAX出版,2007年)では責任編集者として編集を行なった.作品に「villa kanousan」(2009)など.

松山剛士
1978年生まれ.慶應義塾大学環境情報学部卒業,同大学院政策・メディア研究科修了.非線形科学研究者.2003年gh9設立.非平衡開放系における自己組織化のダイナミクスと生成される構造を研究しており,主に意識現象の生成メカニズムの探求から,人間の認知機構における情報処理プロセスの数理的解析,自然界に潜在する各種発展方程式,マクロ経済システムの時系列での収束の研究などを行なう.