ICC

《DriftNet》
2005
平川紀道
撮影:木奥惠三
目の前のスクリーンに広がるCGの海に寄せる巨大な波.体を動かしてこのデータから生成された情報の波を掻き分けると,その波間からリンクが浮かび上がり,波の諸条件によって次のサイトが特定され,再びデータが波となって押し寄せてきます.
この抽象的な波は,インターネットという実体のないヴァーチュアル空間で,本来はブラウザ上でコンテンツとして閲覧されるはずのデータを,数値としてのデータの羅列としてダウンロードし,生成したものです.わたしたちがインターネットにアクセスし,ウェブサイトを閲覧するには,通常マウスとキーボード,ブラウザというインターフェイスを必要としますが,この作品では,そうしたインターフェイスを用いずにインターネットにアクセスします.ウェブサイトを巡回し閲覧する行為を表わす「ネット・サーフィン」という言葉は,身体的で現実の空間を思わせる比喩となっていますが,ここでは,実際に体を動かすことでインターネットの情報空間にアクセスし,題名の示す通りウェブをドリフト(さまよう)するのです.
平川紀道は,コンピュータ・プログラムを用いたインタラクティヴな表現により,日常では知覚しにくい事象を巨視的なスケール感でとらえ,それを直感的なインターフェイスによって体感させる作品を制作している.その作品は,想像力を喚起させるトリガーであり,日常に対する新しい感覚をうながし,世界を再認識させるための装置となっている.
インターネット
インターネットは,全世界のネットワークを相互に接続した分散型コンピュータ・ネットワークです.WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)の登場によって,一般個人やビジネスでの利用が爆発的に増大しました.通常わたしたちは,ブラウザを介してウェブ上の情報にアクセスしますが,その裏では,人間には知覚できないかたちで膨大な情報がやりとりされています.そうしたシステムに着目し,実際の展示空間で展開させる作品も作られています.