ICC Review


PACJAP2000「日仏交流ワークショップ」
第1回セッション
2000年4月7−16日 ギャラリーD



フランス(南仏)と日本の音楽家,メディア・アーティストなど計9人によって音楽,言語,映像,ネットワークなどを使用したグループ・コラボレーションを試みる実験的ワークショップが開催された.このワークショップはマルセイユの芸術組織ラ・フリッシュに属する先鋭的音楽振興組織AMIのディレクターであるフェルディナン・リシャールと日本側の伊藤憲司のオーガナイズによって,日本とマルセイユで毎年1回ずつ,2002年までの3年間継続的に行なわれる.選ばれたアーティストは,きょうこ,小島剛,野村誠,山口優,フレッド・ベルテ,ジェローム・ジョイ,ヨセフ・エル・メジャド,コレット・トゥロン,ルノー・ベルセイの9名.非公開であった制作は,まずこのようなかたちでのコラボレーションを行なうにあたって,それを言葉通り単なるセッションのように行なうのか,なんらかのコンセプトを基盤としてつくりあげるのかといった方法論を整理することから始められた.そして途中1日の休暇を除く8日間にわたる共同制作が行なわれ,16日の成果報告では,リシャールによる講演の後,今後のコラボレーションを行なうえでのツールとも言えるものであろう,「D SYSTEM」と名付けられたプログラムが,音程と音量を音量と音程に変換するものと音量から音節を出力する2種類発表された.それは「声」への関心から制作され,今回のコラボレーションにおいて意識されたディスコミュニケーションやDo It Yourselfという意味を含んだものだという.発表の後,モロッコ人アーティストのエル・メジャドを中心とした演奏が披露された.モロッコの伝統音楽に根ざしたその唱法は素晴らしいものであった.

第2回セッションは今年の11月にマルセイユで行なわれることになっている.今回のセッションは最初のステップであり,今後この9人のアーティストの3年間を経た成果を期待したいと思う.

[畠中実]


前のページへleft right次のページへ