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テクノロジーを利用する動機について考えた 「ニュー・メディア ニュー・フェイス/ニューヨーク」 |
ごろごろと,ランダムに自動的に転げ回るボールをつくるとしよう.デジタル・テクノロジーに長けた者なら,ボールの中にセンサーを入れ,何かに衝突すると感知してモーターを逆回転させるプログラムを組んで……といったような仕掛けをつくりそうなものである. しかし,それほど大げさな制御が本当に必要だろうか? 工作少年なら,センサーやプログラムに頼らなくとも,たやすくそんなボールをつくれてしまう.必要なのはモーターだけで十分.ただモーターの周りに偏心した重りをつけさえすれば,ボール自体がごろごろ転がる──複雑な動きも,簡単な仕組みで実現できる. 高度な最先端技術が日々更新される昨今ではあるが,こうしたシンプルな発想と技術もあらためて見直される時代が訪れつつある.そう思わせる展覧会が,ICCで開催された「ニュー・メディア ニュー・フェイス/ニューヨーク」展である.題名のとおり,ニューヨークを拠点に活動する新しい才能を発掘・紹介する目論見だ.だがこの展覧会,いわゆる「メディア・アート」を期待すると,快い肩すかしを食らう. 会場で真っ先に目に入るのが,中山ダイスケのインスタレーション《Under the Table》.いくつか並ぶテーブルの上にはコーヒーカップがあり,その下にはボールが転げ回る.カフェの喧噪や人の気配,つまりコミュニケーションの痕跡を,音を立ててランダムに転がるボールでほのめかす作品だ.で,このボールの中身は,モーター一つと乾電池.それも,工作少年御用達のマブチモーターだ.マルチならぬマブチ!!! なのである. |
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