ICC Report

CAVE

CAVEシステム応用の仮想閲覧

1999年1−3月



CAVE(TM)とは,イリノイ大学シカゴ校EVL(Electronic Visualization Laboratory)で開発された周囲を囲むスクリーンと立体音響をベースにしたヴァーチュアル・リアリティ・システムである.ICCでは,このシステムを利用したヴァーチュアル・リアリティに関する研究会を設け,試作を行なった.

同研究会において,このヴァーチュアル・リアリティ・システムはディスプレイ装置の延長でしかないのか,それとも空間を再構築できるツールとなりうるのか,現実空間と再構築された仮想空間の境界を曖昧にすることができるのではないかといったことが議論され,現実空間から仮想空間へ,そして情報空間への橋渡し(インターフェイス)としてCAVEシステムを利用したものを試作しようということになった.

具体的には,本棚のある部屋を想像していただきたい.そして部屋中央には机が設置されている.あなたはある調べ物があり,必要な情報を探している.本棚から関連した本を机の上に広げる.部屋は広げられた本に関連する情報をヴィジュアル化して調べ物の手助けをしてくれる.そして机の上の本を整理して配置することで部屋はあなたが探している情報へのポインタを本棚へ,そしてインターネットの情報空間へとキーワードを投げかけるのだ.

CAVEシステムを現実空間と仮想空間・情報空間の境界,部屋として位置させることにより,この大がかりな装置をより人に身近なツールの一つとして機能させることができた試作と言ってよいだろう. EVLでは,CAVEシステムを利用した通信プロジェクト,初等教育プログラムへの活用などCAVEシステムそのものの機能の拡充を図るとともに,その応用を模索している.日本国内においても,近年CAVEのようなシステムが大学や企業の研究所などの研究機関に導入され,ヴァーチュアル・リアリティの研究が盛んに行なわれている現在では,このようなヴァーチュアル・リアリティ・システムは最先端の技術ではないのかもしれない.
だからこそいま,ICCでは表現のための媒体(メディア)としての可能性や共同作業の場の構成方法を探っていき,創造のためのツールとしてCAVEを活用していくことが重要な課題であると考えている.今後もCAVEシステムを利用した新しい試みを積極的に行なっていきたい.

[石川新一]

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