特集:テレプレゼンス――時間と空間を超えるテクノロジー/ウィリアム・バクストン・インタヴュー
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コンピュータの消滅 WB――ここからおのずと第四点が浮かび上がってきます.第四点が示しているのは,テクノロジーのパースペクティヴから見て,これまでお話ししたすべての帰結として現われ出てくる何もかもが,世間一般でテレコミュニケーション・テクノロジーについて語られていることと相反している,ということです.現在,私たちは「集中」の時代にいる,と誰もが口にします.電話,コンピュータ,その他一切が,一体化しようとしている,と.「集中」は,みんなが語る,すばらしき救済の物語です.しかし,実際にはまったく正反対なのです.「集中」は,想像しうる最悪のコンセプトです.
ここで私が何を言おうとしているのか,少し慎重に説明しておく必要があるでしょう.配管工をご存じですね? 配管工にとっては,集中は大変良いことです.建物の話に戻って──このビルには,ビル全体に水を供給する,つまり蛇口やその他,末端の設備に水を送るセントラル・ネットワークがあります.このネットワークは同時に使用済みの水を排出します. 要するに,今日,最も重要なのは,コンピュータを消滅させること――コンピュータが存在しないようにすることです.「集中」とは配管工にとってのみ有用なものであるということを認識すれば,その帰結はこうです.つまり「集中」とはウォーターネットの領域においてのみ有用なのであって,実際の価値は,正しいかたちで配備された,専用化された設備──つまり,それによって,この部屋は洗濯室であり,この部屋はシャワー室であり,この部屋は皿を洗う部屋である,ということがわかるようなものにこそあります.あるいはビジネスの場であれば,この部屋は大会議用,この部屋は小会議用,この部屋はエンジニアのミーティング用,この部屋はカジュアルなミーティング用,この部屋はランチタイム用等々といったことがわかるような,そんな設備を手にしたときに初めて現われてくるものなのです.
つまり多様性です.この多様性がわれわれを導いていってくれるのは,従来「ユビキタス・コンピューティング」と呼ばれてきた領域です. |
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