InterCommunication No.16 1996

InterCity PRAGUE


訳者付記

清恵子

同展に「オルビス・フィクトゥス」という正式の名称が付けられたのは,最終準備も押し迫ってからだ.当初,チェコの軍事産業をどうアーティストが使うかというテーマで進められていた同展だが,途中から逆に平和主義のコメニウスの方に全体の方向が傾いた(前者については,チェコ製のユニークな受動式レーダー「タマラ」システムで得たチェコ上空のデータをシリコングラフィックス社のONYXを用いて映像化したルボール・ベンダのインタラクティヴ作品などがある).17世紀のこの思想家,教育家が,チェコのメディア・コミュニケーション理論の祖の一人であり,この国のメディア史を国際的な文脈に位置づけるためにも重要な人物であることに,同時期に何人もが気づいていたようだ.そういうわけでこの記事は,同展のキー・プロジェクトともなった《オルビス・ピクトゥス改訂版》の制作アーティストで,自身もチェコとオランダを中心に美術評論,キュレーターとして活躍するミロシュ・ヴォイチェコフスキーに,その作品とコメニウスを中心に書いてもらうことにした.ニュー・メディア,ハイ・テクノロジーに対する否定的な見方はこの国では必ずしも少数派ではないことを,付け加えておかねばならない.


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