慶應義塾大学 筧康明研究室
中:#02「Physical Digital」展示風景
下:#03「Beyond Magic」展示風景
撮影:木奥恵三
私たち筧康明研究室は,2008年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)エクスデザイン(XD)プログラムの中に立ち上げられました.XDプログラムは,学際的な視点で統合的にデザインを行なうこと,複雑化するデザインを理解し新しい価値創造を行なうことを目指す,新たなデザイン・プログラムです.インタラクティヴ・メディア研究者の筧康明は,このプログラムの創設に参加し,研究員,学生と共に,エンジニアリング/アート/デザインの汽水域における研究・制作活動を展開しています.
今回の展示は「HABILITATE」という言葉をテーマに据えました.これは,リハビリテーションという言葉からReを外した動詞です.リハビリテーションの語源はラテン語のreとhabilisが合わさったものと言われています.マイナスをゼロに戻して「再び」環境に適応するというリハビリテーションに対して,HABILITATEという言葉からは,「今」を基点としてプラスに作用する状態を目指すという,よりポジティブなニュアンスを感じます.今回私たちが展示するのは,「ヒトとモノ」,「ヒトとヒト」,「ヒトと場」など今そこにある関係を,少し新しく,そして時に少し良くするためのデザインおよびエンジニアリングの取り組みです.
この取り組みは現在,「物理世界(Atoms)とデジタル世界(Bits)の融合」,「AtomsとBitsが融合した新たなメディア・ツールと人間とのインタラクションのデザイン」,そして「身体的や社会的に『人間が今より少し進化する』ためのアクティヴィティの実践」という,大きく三つのステージで進められています.(筧康明)
協力:
JST-CREST「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」研究領域
旭硝子株式会社
#01「Usual Unusual」
[展示期間:2014年6月21日(土)─9月21日(日)][終了しました.]
一つ目の「物理世界(Atoms)とデジタル世界(Bits)の融合」は,近年盛んなウェアラブル・ディスプレイやプロジェクション・マッピングに見られるような実世界への情報の重ね合わせに留まらず,より物性に踏み込んだレヴェルでの物質と情報の浸透・融合を目指すものです.伸縮性や導電性,磁性など物質の本来有するさまざまな特性を丁寧に引き出してデジタル情報と接続することで,物質に命を宿らせ,即興的な変化が可能な存在としてデジタル・ネットワークの生態系の中に組み込んでいきます.
#02「Physical Digital」
[展示期間:2014年9月23日(火)─12月28日(日)][終了しました.]
二つ目のステージは,AtomsとBitsが融合した新たなメディア・ツールと人間とのインタラクションのデザインです.これらのメディアはユーザに対して多様なレヴェルでのインタラクションを可能にし,意図的にも非意図的にもユーザの身体や行為を拡張してくれます.このようなインタラクションは,人間と機械,人工物と自然物などの境界をより露わに,もしくはより曖昧にする表現を可能にします.
#03「Beyond Magic」
[展示期間:2015年1月6日(火)─3月8日(日)][終了しました.]
三つ目のステージは,身体的や社会的に「人間が今より少し進化する」ためのアクティヴィティの実践です.人と絵の関係を例に出すと,絵が上手くなる以外にも,絵が分かるようになる,絵が好きになる,絵が描きたくなる,など色々な観点でその関係の更新は可能です.福祉,防災,スポーツ,表現など,さまざまな領域での私たちの生活の場に向き合いながら,新たなインタラクティヴ・メディアの開発と利用を通して,テクノロジーが生み出すマジックと,その先にある未来を示していきたいと考えています.
筧康明 プロフィール
1979年京都生まれ.インタラクティヴ・メディア研究者/デザイナー.慶応義塾大学環境情報学部准教授.博士(学際情報学).人間の五感や物理素材の特性とデジタル情報を掛け合わせ,身体,道具,コミュニケーションを拡張するインタラクティヴ・メディアを開発する.エンジニアリング/アート/デザインの分野をまたがって活動を展開し,シーグラフ,アルス・エレクトロニカ・フェスティヴァルなどでの展示や平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞や2012年グッドデザイン賞BEST100などを受賞.また,アートユニットplaplaxとして,主に商業分野におけるメディア・テクノロジー/表現の展開可能性を開拓する.
http://www.xlab.sfc.keio.ac.jp/~kakehi/
過去に参加した展示・イヴェント