ICC
OS2014
展示作品
《バイナトーン・ギャラクシー》
2011年
スティーヴン・コーンフォード dot

撮影:木奥恵三

数十台の中古のカセット・レコーダーが壁に掛けられて音を発しています.しかし,レコーダーの中のカセット・テープにあらかじめ録音された音が再生されているわけではありません.そこから聞こえてくる音は,レコーダーという装置自体がいまそこで発する音なのです.装置のモーターが駆動し,カセット・テープを走行,再生させる機構による挙動に伴って発される音を,装置内のカセットに装着されたマイクロフォン(圧電センサー)によって取り出し,増幅することで音を発します.

この作品は,カセット・レコーダーという技術の進歩に伴い使用されなくなっていく旧式のテクノロジーをオリジナルな音響発生装置へと作り直し,装置の持つ機能的な可能性を再考しています.本来,レコーダーという装置と,カセット・テープという記録媒体は,どちらか一方だけでは機能しません.しかし,この作品では,カセット・テープに事前に録音された音の代わりに,マイクロフォンがとらえたレコーダーのリズミックな機械音とカセット・テープのプラスチックのケースの中の音響特性を聴くことができます.それは,カセットの中の音響と機械それ自体の声を聴くことで,すでに消費されてしまったテクノロジーの持つ,もうひとつの意義を明らかにするのです.

なお「Binatone」は英国の電子・音響機器のブランド名に由来しています.

(ZKMコレクション)

スティーヴン・コーンフォード プロフィール
1979年ロンドン生まれ.テープレコーダーやCDプレーヤーなどの,民生用の電子音響機器の内部構造に手を加え,その機能を更新し,機器自体が持つ本来は聞こえないノイズを引き出すオリジナルの装置を制作.インスタレーション展示や実験的な演奏など,美術と音楽,展覧会と演奏会の中間領域で活動している.オックスフォード・ブルックス大学ソニック・アート・リサーチ・ユニット研究員.

関連イヴェント


パフォーマンス&アーティスト・トーク
スティーヴン・コーンフォード

日時:2014年6月22日(日)
午後7時より[終了しました.]
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