1972/2012年
阿部修也
撮影:木奥恵三
ブラウン管モニターに極彩色のパターンが映し出されています.このような鮮やかな色彩は,通常の映像の色信号の出力を超えてしまっているので,放送などのヴィデオ映像の規格では使用することができません.この映像は,ヴィデオの映像信号を変調させる,ヴィデオ・シンセサイザーによって作られ,電子メディアやテクノロジーを介した新しい抽象表現の可能性を探求し,ヴィデオという電気信号によって再現される電子映像が,電気的に加工可能な素材であるということを示すものでもありました.
ナムジュン・パイクは,ヴィデオという電子の映像を芸術における新しい表現領域とした,ヴィデオ・アートの創始者として知られるアーティストです.パイクは,日本でエンジニアの阿部修也と知り合い,パイク=アベ・ヴィデオ・シンセサイザーを共同で制作し,この装置を用いた映像を使用したヴィデオ・アート作品を数多く制作しました.
こうしたアーティストのアイデアとエンジニアの技術的なサポートによる共同制作,および表現のための技術を自ら制作することは,メディア・アートの世界ではめずらしくありませんが,この作品は,その先がけとしての歴史的なコラボレーションだと言えるでしょう.
本展では,阿部によって再制作された《パイク=アベ・ヴィデオ・シンセサイザー 1972年版レプリカ》を展示します.
展示協力:瀧健太郎
阿部修也 プロフィール
1932年生まれ.東京放送(TBS)や東洋現像所(IMAGICA)の技術部に勤務.1964年に,ナムジュン・パイクの作品《ロボット K-456》の制作に協力し,1969年には《パイク=アベ・ヴィデオ・シンセサイザー》を制作するなどの技術支援を行ない,パイクの生前,没後を通じて,パイクの活動において重要な役割を果たす.その貢献により,2013年,第17回文化庁メディア芸術祭において功労賞を受賞した.
過去に参加した展示・イヴェント
関連イヴェント
バーバラ・ロンドン
スペシャル・トーク
「ヴィデオ幻視者たち:それってテクノロジーと何の関係があるの?」
ゲスト:阿部修也
日時:2014年8月8日(金)
午後7時より[終了しました.]
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