
2013年
和田永(Open Reel Ensemble)

撮影:木奥恵三
旧式の録音再生装置であるオープンリール式のテープレコーダーが高い台の上に横向きに置かれ,片方にだけ取り付けられたリールが回転すると,巻きとられていた磁気テープが記録された音を再生しながら落ちていきます.テープは,台の前面に取り付けられた薄い透明なアクリル容器の中へと落ちていき,容器の底から段々に折り重なりながら溜まっていき,容器の中に織り込まれていきます.それは,どこか織物や絵画のような模様を描き,容器に溜まると今度は高速で巻き上げられていきます.
この作品で使用されているオープンリール式のテープレコーダーは,すでに引退したテクノロジーと言ってよいでしょう.それは小型のカセットテープになり,現在では音楽はハードディスクに記録されるようになりました.和田は,可能性を使い果たしてしまったかのように見える旧式のテクノロジーに再び可能性をみいだし,再利用することによって作品を制作します.それを現代のテクノロジーと組み合わせながら改造することで,もともとの用途からはなれた,あらたな装置として再生させています.
いろいろな装置の歴史をさかのぼりながら,装置自体が持っていた能力を再発見し,あり得たかもしれない可能性を考察することは,メディア・アートの中に顕著にみられる傾向でもあります.
和田永(Open Reel Ensemble) プロフィール
1987年生まれ.大学在籍中よりミュージシャンとしても活動.旧式のオープンリール・テープレコーダーやブラウン管テレビなどの古い電化製品をコンピュータで制御し,生楽器やその場でテープに録音した音を組み合わせて音楽作品の発表やパフォーマンスを行なう.2009年より佐藤公俊,吉田悠,難波卓己,吉田匡と「Open Reel Ensemble」の活動を始める.また,ブラウン管テレビを楽器として演奏する作品「Braun Tube Jazz Band」で第13回メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞.
過去に参加した展示・イヴェント