MIKAMI SEIKO Desire of Codes | 三上晴子 欲望のコード

01 はじめに

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] では.2010年に山口情報芸術センター [YCAM] にて委嘱制作し公開された.三上晴子による大規模なインタラクティヴ・インスタレーション《欲望のコード》の新ヴァージョンを発表します.

巨大な壁面には.センサーと小型カメラを搭載した90個のデヴァイスが設置され.天井からは.カメラとプロジェクターが搭載された6基のロボット・アームが吊られています.各装置は.昆虫がうごめくように観客の位置や動きを察知し.それに向かって動き出し.観客を監視します.会場の奥には.昆虫の複眼のような巨大円形スクリーンが位置し.それぞれのカメラの映像データは.世界各地の公共空間にある監視カメラの映像とともに独自のデータベースを構築し.過去と現在や会場と世界各地の映像が.複雑に交錯しながらスクリーンに投影されます.

三上晴子は.「情報環境と身体」をテーマに.コミュニケーション・テクノロジーとその情報生態系が生み出す相互作用の中で自身の芸術表現を行なってきたアーティストです.この作品では「現在の情報化された環境と知覚に生きるわたしたちの新たな欲望とはなにか」を問題意識として.映像.音響.データなど.さまざまなネットワーク環境からの情報を.自律的なシステムを持つコードによって再構成することで制作されています.鑑賞者に反応するように動き出す.生きたような空間/装置の中で.現在の情報技術とインタラクションの生み出す.時間/空間の変容を体験することができる作品です.《欲望のコード》は本展覧会終了後.世界各地に巡回する予定です.

02 作品と作家の紹介

多視点+多眼のシステムが生み出す欲望

このインタラクティブ・インスタレーションは3つの構成で展開される.巨大な壁面を覆い尽くす昆虫の触毛を思わせる大量のストラクチャー[ “蠢く壁面” ]と,会場中央の天井から吊られた6基のサーチアーム[ “多視点を持った触覚的サーチアーム” ]は,昆虫がうごめくように,観客を追尾し,監視している.また,会場の奥には,昆虫の複眼のような巨大な円形スクリーン[ “巡視する複眼スクリーン” ]が設置されており,ここにはストラクチャーに取り付けられたビデオカメラの映像や,世界各地の公共空間にある監視カメラの映像などによって構築されるデータベース「欲望のコード」から映像が,複雑に交錯しながら投影されている.さらに,会場のいくつかのポイントには超指向性マイクが設置されており,インスタレーション空間内で発生する話し声や物音,作品の機械音を収集.3つの構成の状態をもとに,現時点までに蓄積された過去の音声を呼び戻し,それを素材として,常に新たな音響空間を生成している.このようにして時間や空間を断片的に組み変えながら,新たな現実を描き出すスクリーンの映像やインスタレーション全体の音響空間は,観客自身を監視と表現の対象として,そこにある 私たちの今日的な身体性と欲望の所在を問いかけている.

ブックレット『三上晴子 欲望のコード』(2011)より

Profile 三上晴子

アーティスト.1984年から情報社会と身体をテーマとした大規模なインスタレーション作品を発表.1992年から2000年までニューヨークを拠点に主にヨーロッパとアメリカで数多くの作品を発表する.1995年からは知覚によるインターフェイスを中心としたインタラクティヴ作品を発表.視線入力による作品,聴覚と身体内音による作品,触覚による三次元認識の作品,重力を第6の知覚ととらえた作品などがある.ミロ美術館,ウィーン・クンストラハウス,ナント美術館,メディア・アート・チャイナ,トランスメディアーレ,オランダ・DEAF,アルス・エレクトロニカ,YCAM,ICCなど国内外の美術館,メディア・アート・フェスティヴァルに出品参加.現在,多摩美術大学教授.

過去に参加した展示・イヴェント

03 関連イヴェント

アーティスト・トーク
出演:三上晴子池上高志,榑沼範久,畠中実(ICC)
日時:2011年12月16日(金)午後6時より[終了しました.]
会場:ICC 4階 特設会場
定員:200名(当日先着順)
入場無料(展示をご覧になるには別途,入場料が必要です.)

イヴェントの模様はインターネット中継されます.

池上高志,榑沼範久 プロフィール

池上高志
1961年生まれ.東京大学大学院総合文化研究科教授.1984年東京大学理学部物理学科卒業,1989年東京大学大学院理学系研究科物理学修了.理学博士.「コンピュータ・シミュレーションをもとにした生命システムの理解」=「複雑系」を研究テーマとし,ダイナミクスからみた生命理論の構築を目指す.カオスの生態系における意義についての新理論などを提唱し,『複雑系の進化的シナリオ』(金子邦彦と共著,朝倉書店,1998)や『動きが生命をつくる』(青土社,2007)を発表.主に人工生命の国際会議に参加,当該研究分野において多大な貢献をするほか,3つの国際ジャーナル(BioSystems, ArtificialLife, Interaction Studies)の編集を務めている.一方で,サウンド・アーティストの渋谷慶一郎と,第三項音楽という新しいサウンド・アート活動を提唱し,山口情報芸術センター [YCAM]で《filmachine》(2006)や《MTM [Mind Time Machine]》(2010)などのインスタレーションを発表.

榑沼範久
1968年生まれ.横浜国立大学大学院都市イノベーション学府(建築都市文化専攻Y-GSCスタジオ)・教育人間科学部(人間文化課程)准教授,東京藝術大学美術学部(先端芸術表現科)非常勤講師.芸術論・哲学.1990年東京大学教養学部卒業,1998年英国ケント大学大学院人文科学研究科修了,東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士課程単位取得満期退学.ジェームズ・J・ギブソンの生態学的視覚論を知覚・感覚の哲学から捉えなおし,近代以降の視覚メディア・視覚文化から建築や都市までを研究対象としている.編著に『運動+(反)成長──身体医文化論〈2〉』(慶應義塾大学出版会,2003).主な論文に「生態学的建築をめざして──建築とギブソンの生態学──」,「知覚情報美学にむけて」,「問題の真偽と実在の区分──ギブソンとベルクソンの方法」,「ダーウィン,フロイト──剥き出しの性/生,そして差異の問題」,「音響による人体の爆撃──第一次世界大戦,フロイト,ポピュラー・ミュージック」,「自滅するヴィジョン──プラトー,ラカン,『ピーピング・トム』」.訳書にハル・フォスター編『視覚論』(平凡社,2003,2007)などがある.


  • 撮影:篠田英美
アーティストによるギャラリーツアー
出展作家 三上晴子が作品を解説します.
日時:2011年12月17日(土)午後6時より[終了しました.]
定員:50名(当日先着順,午前11時よりICC受付にて整理券を配布します.)
入場料:当日の展覧会入場チケットが必要です.再入場の方は受付にチケットをご呈示ください.

*ツアーでは《Eye-Tracking Informatics——視線のモルフォロジー》の実演は行ないますが,ご体験はしていただけません.あらかじめご了承ください.

04 関連展示

《Eye-Tracking Informatics——視線のモルフォロジー》

会期:2011年12月9日(金)—18日(日)[終了しました.]
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] シアター
休館日:月曜日
*ご覧になる場合は,特別展「三上晴子 欲望のコード」入場チケットが必要です.

1996年にキヤノン・アートラボで制作発表された視覚の実験である《モレキュラー・インフォマティクス—視線のモルフォロジー》は,96年から04年までヴァージョンアップをしながら世界各地で発表された作品です.この作品は,体験者の視線を視線入力装置によって感知し,それによって描かれる形態を,仮想の3次元空間内に生成していくインスタレーションです.「視ることそのものを視る」,「無意識と意識の連鎖」というふたつのコンセプトから,空間と身体の対応関係を再考しようとしたものです.
2011年に山口情報芸術センター [YCAM]で再制作されたヴァージョン《Eye-Tracking Informatics——視線のモルフォロジー》では,仮想空間に生成される視線の軌跡は圧倒的な描画速度となり,音響システムは三次元音響に構成し直され,非常に緻密で豊かなものとなっています.視線入力技術に「The EyeWriter 2.0」(http://www.eyewriter.org/)を導入したYCAMでの展示では,二人で体験する作品として発表されていますが,今回のICCでは,一人用のヴァージョンとして構成を変えて展示します.

・この作品は視線入力技術を利用しているため,視力をはじめとした身体的な条件や,年齢によりご体験いただけない場合がございます.
・作品のご体験は,原則お一人様ずつとさせていただきます.そのため,一日にご案内できる人数には制限がございます.会場では整理券発行による予約制で順次ご案内しておりますが,ご来場の時間によっては,ご体験いただけない場合がございます.あらかじめご了承いただけますようお願いいたします.
・見学可能

山口情報芸術センター [YCAM] 委嘱作品
サウンド・プログラミング:evala
ヴィジュアル・プログラミング:平川紀道
阿部一直(YCAMキュレーター)
YCAM InterLab(伊藤隆之,大脇理智,濱哲史, 高原文江, 渡部里奈)
協賛:カラーキネティクス・ジャパン株式会社
協力:山口情報芸術センター [YCAM]

山口情報芸術センター [YCAM]《Eye -Tracking Informatics——視線のモルフォロジー》

05 利用案内

入場料
一般・大学生 500(400)円/高校生以下無料
*( )内は15名様以上の団体料金
*会期中1回に限り再入場していただけます.
チケット割引情報
・「三上晴子 欲望のコード」ICC Online割引クーポン
こちらのクーポンをプリントアウトしてお持ちください.展覧会に割引料金でご入場いただけます.
|→割引クーポンはこちら|
東京オペラシティアートギャラリーとの相互割引

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 受付で同時期に開催中の東京オペラシティアートギャラリー企画展の入場券をご呈示いただくと,本展に団体料金でご入場いただけます.
また東京オペラシティアートギャラリー企画展にご入場時の際に,本展入場券をご呈示いただいた場合も,団体料金でご入場いただけます(他の割引との併用不可,ご本人様のみ1回限り有効).

「ぐるっとパス 2011」

「ミューぽん」

開館時間
午前11時—午後6時(入館は閉館の30分前まで)
休館日
月曜日
交通案内
アクセスページをご覧ください.|→アクセスページ|