ICC

展示作品

《パラレル・イメージ》
2008年
ゲープハルト・ゼンクミュラー+フランツ・ビュッヒンガー

撮影:木奥恵三

天井から吊り下げられた二つのパネルの片方に,検知した明るさによって電気抵抗が変わる光導電体が2500個取り付けられています.もう片方には同数の電球が取り付けられ,お互いのパネル上の位置が対応するように銅線で接続されています.光導電体に当たる光の明るさが変わると,それが反対側の電球の明るさに反映され,光導電体の「カメラ」側に映った像がそのまま電球の「モニター」に伝えられます.

この作品は「画像伝送技術において,走査の原理が発案されていなかったら?」という仮定のもとに発想されました.テレビやファックスなどに一貫して使われている走査は,画像を細かく分割し,それを時間とともに変化する1本の信号の流れとして送る(シリアル)技術ですが,ここでは,送信側と受信側がピクセルごとに直接接続され,その小さなユニットの集合として全体が構成されています.並列(パラレル)に送受信が行なわれ,一次元の信号に変換されることがない点で,その仕組みがわかりやすく,電子的なカメラ・オブスクラとも呼べるようなシステムとなっています.実用面から考えると,この方法は非効率的で,ばかばかしさすら感じられます.しかし一方で,我々が他者へなにかを伝えたいという欲望が,あるアイデアが発見されないままであることで抑えられるものなのか,考えるきっかけを与えてくれます.

協力:Fels-Multiprint

ゲープハルト・ゼンクミュラー+フランツ・ビュッヒンガー プロフィール

ゲープハルト・ゼンクミュラーは,電子メディアの歴史をメディア考古学的観点から探求し,実際の歴史とは異なる形で発展を遂げた「ありえたかもしれない」システムを作品として発表している.主な作品に,《ヴィニールヴィデオ》,《スライドムーヴィー》など.アーティスト活動のほかに,建築写真家としても活動している.現在ウィーン在住.《パラレル・イメージ》は,ウィーンを中心に活動するエレクトロニクス/コンピュータ・エンジニアのフランツ・ビュッヒンガーとのコラボレーションにより制作された.
→過去に参加した展示・イヴェント

関連イヴェント アーティスト・トーク ゲープハルト・ゼンクミュラー,イェンス・ブラント
日時:2010年5月15日(土)午後2時より[終了しました.]|→詳細|