ICC

展示概要・作品

《メトロノームと無響室のための作品》
2009年
前林明次
展示期間:2009年9月19日(土)—2010年2月28日(日)[終了しました.]


撮影:木奥恵三

室内の椅子に座ると,目の前のメトロノームがリズムを打っています.それに合わせて別の場所,空間で録音されたさまざまな音の出来事が重なったり,消えたりを繰り返し,それに連動して照明も変化します.目の前のメトロノームに重ねられる音は,観客が聞いているのと全く同じ位置関係にメトロノームを置き,様々な空間において録音したものです.そのためメトロノームを中心に周囲の空間が移り変わっていくような感覚が与えられます.

この作品が設置されている無響室は,部屋全体が音の反響を吸収してしまう素材で囲まれています.わたしたちは通常,空間の広さなどを音の反射によって把握しているため,それが排除された空間である無響室では,メトロノームの音に「現実感」のなさや「不自然さ」を感じるでしょう.さまざまな空間で録音されたメトロノームの音は,周囲の空間の反射音を含んだ音響として録音され,それがバイノーラル録音と,それをスピーカーによって再現する立体音響技術によって,実際にメトロノームの置かれた無響室の空間で擬似的に再現されます.それによって,無響室という「現実感」のない空間と,立体音響技術によってもたらされる擬似的な「現実感」のある空間という,ふたつの空間性が対比され,場所や空間について,わたしたちがどのように「現実感」を認識しているのかということを考えることができます.

前林明次 プロフィール
前林明次は,1965年生まれ,身体と環境の接点としての「聴覚」や「音」に焦点をあて,体験の「場」としての作品を提示している.ICCビエンナーレ ‘97で準グランプリを受賞した作品《AUDIBLE DISTANCE(視聴覚化された「間」)》や,聴覚の変化が知覚に及ぼす影響を作品化した,99年の作品《Sonic Interface》などがある.近年は立体音響技術を利用したサウンド・インスタレーション,画像認識システムによるダンサーとのコラボレーションも行なっている.現在,情報科学芸術大学院大学(IAMAS)准教授.
過去に参加した展示・イヴェント

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