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展示概要・作品

emergencies
エマージェンシーズ!011
佐藤哲至+坂本洋一《blank》
2006/09年
展示期間:2009年5月16日(土)—8月9日(日)[終了しました.]


撮影:木奥恵三

水平に張られた上下2本のスクリーンに,映像が投影されています.スクリーンに複数現われる線分の動きから,それが人が歩いている様子であることが「見えて」きます.この情景は,わたしたちが主観的に読み取ったものなので,もちろん実体はありません.しかし,線分の運動というシンプルな映像であるからこそかえって,いないはずの人の気配すら感じられてくるようです.

人間の脳には,わずかな情報を手がかりとして足りないものを補完し,ひとつのイメージとして認識する機能があることが知られています.この作品も,鑑賞者にイメージを構築させるための手がかりを与えるものとして制作されました.ここでの手がかりとは,映像だけでなく,作品を構成する要素すべてです.映像の内容と,その投影先となるスクリーンの幅や数,高さなどは,相互のバランスを見ながら検討され,最終的に展示する空間に合わせて決められます.このようなプロセスを経て,最小限の要素によって人間の気配を十分に感じさせる状態が抽出されています.この,情報の中身(=コンテンツ)と,その土台としての枠組(=フレーム)を不可分なものとして捉えようとする姿勢のなかに,両者の関係性に対する作者の繊細な感覚が見てとれるでしょう.

佐藤哲至+坂本洋一 プロフィール
佐藤哲至(1981年生まれ,2006年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒)と坂本洋一(1982年生まれ,2006年東京藝術大学美術学部建築学科卒)はともに,2008年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了.在学中に,共同で《blank》の第1ヴァージョンを制作する.現在は武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科助手(佐藤),建築設計事務所勤務(坂本)のかたわら,それぞれ作品制作活動を行なっている.

関連イヴェント
ワークショップ「言葉あそびから始めるメディア表現」
日時:2009年7月19日(日)午後1時—5時[終了しました.]|→ 詳細|