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《ENDSVILLE》のためのノート
カテリーナ島はロサンゼルス沖からさほど遠くないところにある.雄大な山々に囲まれたアヴァロンはこの島唯一の町.船遊びをする人たちにとって,ここは短期間のレジャーにもってこいの場所だ.週末になるとたくさんのヨットが港湾パトロールに迎えられ,それぞれブイを割り当てられて,きちんと列を作って桟橋につながれる.海の駐車場のようなものだ.夕暮れどきに,停泊地を見下ろせる山道を歩きながら,停泊しているヨットの全体像を眺めた.それぞれのヨットから蛍光性のオーラが出ている.ヨットに乗っている人たちが見ているテレビが発している光だ.光のちらちらするパターンで,同じ番組を見ている人が何人いるのかがわかる.
このテクノロジーにコントロールされた同一性とプライバシーという考えが融合して,《エンズヴィル》というコンセプトが生まれた.宇宙から見たコミュニティ全体は未来の幻想的なオーケストラで,それぞれの家が楽器であり,住人がデジタルメロディを奏でているというものだ.
《エンズヴィル》を別のコンテクストに広げてみるというひらめきを与えてくれたのは陽子だ.このコンセプトを主観的にみた東京の最近の歴史と拡がりに当てはめることで,私たちのコラボレーションは共通の言語を語る作品を生みだした.この作品は最近の歴史的事件により強烈に心に訴えるものになっていると私たちは確信している.私たちの作品は文化的,地理的な境界を越えた大海の一滴にすぎないが,この作品が控えめながらも人々の度量と相互理解を深めることに貢献してくれたらと願っている.
ローランド・ブレナー
2001年11月
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