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1997年7月29日(火)〜 9月7日(日) [終了しました.] ギャラリーA,D,シアター





はじめに


加速化する情報化時代のなかで,ひたすら増殖する記号的イメージと虚像の氾濫. 一方で,アートとサイエンスがこれほどまでに相寄ろうとしながら,常に皮相な観念 のなかに拡散して裏切られてしまう現代の世紀末的状況…….せめて,科学と芸術の 原初のふるさとであった自然現象との対話を取戻し,童心に帰って,存在との一体感 を懐かしむ展覧会の可能性がないものか…….これは,そのささやかな試みの一つで ある.
ここには,ハイテクやウルトラ・モダンな装いの作品の代わりに,人類が悠久の昔 から感動し,美意識と好奇心を触発されてアートや科学の芽を育ててきた水や砂や大 気の自然現象や,素朴な結晶構造の挙動や,そして大地と宇宙の律動を感じさせてく れる振動や運動の軌跡の数々がある.しかも,いずれも,現代のアーティストたちが ,科学者と同様に,存在の背後に潜む摂理の神秘に感じて,五官で感じる表現にまで 高めることのできた作品群である.ここには,もはや科学と芸術のあいだの厳密な境 界線さえ存在しない.
アトムからビットへと傾斜する現代のメディア・アートの趨勢のなかで,むしろこ の作品群は,次の時代にますます必要となるビットとアトムの共存,そしてビットか らアトムへの往還運動へ向けての,新しい意識の触媒役を果たすに違いない.ときは 夏.人々が過去を偲び,水を触媒に,宇宙や精霊との対話を取り戻す季節ではないか.